ハリウッドでセクハラ行為の告発が広がっていることを受け、女優カトリーヌ・ドヌーヴらフランスの女性100人が、「口説きは犯罪ではない」などと批判する寄稿文を、1月10日付のル・モンド紙に掲載した。
寄稿文は「女性たち、別の意見を述べる」というタイトルで、ドヌーヴの他、ジャーナリストや作家らが署名。「執拗だったり不器用な口説きは犯罪ではない」とし「仕事のディナーでひざを触ったりしただけで」仕事をやめざるを得なくなった男性たちを擁護。「性的自由に不可欠な言い寄る自由」を守るとした。フランスで「#豚を告発せよ(Balance ton porc)」という呼び名で広まったこの告発の動きを「ネット上のたれこみ」と批判。女性を「無垢な保護対象」とし、女性の自立を促さないと主張。さらに女性は、地下鉄で痴漢行為に遭っても「取るに足らないことと捉えるべき」とした。また、芸術分野で性的な表現を禁じる「お清め」、の動きが起こっていることも問題視している。
この意見はすぐに論争を巻き起こした。女性運動家のカトリーヌ・ドゥアースは、男女の誘惑とハラスメントなど「何もかも一緒にしてしまっている」と憤慨。マルレーヌ・シアッパ男女同権担当相は、性暴力が矮小化されていて「危険だ」とした。さらに署名した女性たちが個別にメディアに登場し、自分の意見を展開。元ポルノ女優のブリジット・ラエは「レイプで快感を得る女性もいる」と発言し、混乱を助長した。
批難を受けドヌーヴは、15日付のリベラシオン紙に「私は自由な女性で、これからも自由」と題した新たな寄稿文を掲載。ル・モンドの寄稿文はハラスメントの擁護ではなく、真偽の定かではないネット上の告発が、芸術関係者の職業生命を奪う風潮に反対していると説明した。一方で、ル・モンド紙の寄稿文で傷ついたハラスメントの被害者がいれば謝罪するとした。
騒ぎはおさまらず、多様な立場の人が次々と意見を発表。元女優ブリジット・バルドーは18日付パリ・マッチ紙に「女優の多くは偽善者。役を得るためにプロデューサーを誘惑し、その後話題になろうとハラスメントを受けたと言う」と答えた。ドヌーヴやバルドーの意見は、アメリカ女性の正義観を冷めた目で見るフランス女性の意見として、世界中で取り上げられたが、フランスでも意見は分かれている。告発の動きの正当性や、どんな行為をハラスメントとするのか。男性と対等の女性、強い女性とは何なのか。議論は尽きない。(重)