ここ数年、フランスを始めヨーロッパでは日本酒の人気が徐々に高まっている。輸入量も増え、和食のみならずフランス料理のガストロノミックなレストランでも日本酒を置くところが出てきている。また、本年2月1日より日本とEU間で「EPA(経済連携協定)」が発効されたため、今後フランスに輸入される日本酒の関税が撤廃され、さらに親しみやすい価格になることが期待されている。
そんな日本酒の魅力をさらに深く知ってもらおうと、去る2月11日にJFOODO(日本食品海外プロモーションセンター)主催でイベント「Goûts et Sakés」がシャンゼリゼ通り近くのエトワール・ビジネス・センターで行われた。飲食関係者やホテル学校の生徒など、多くの参加者を集めた。
【第1部 】
イベントは3つの座談会を中心に構成。第1部は、「酒、今日と未来 日本とフランスにおいて」と題され、世界で最も優秀なバーテンダーの一人である後閑信吾さんと、パリで毎年開催されているサロン・ド・サケの主催者で酒サムライの称号を持つシルバン・ユエさんが、日本酒に関する考えや使い方に関して話し合った。モデレーターはアート・ディレクターの近衛忠大さん。
ユエさんによると、日本酒の人気が高まっているとはいえ、まだ日本酒のことをスピリッツだと思っているフランス人も多いという。今後はフランス人が理解しやすい概念(「米でできたワイン」など)を用い、日本酒を浸透させていく必要があると語った。後閑さんはバーテンダーの立場から、日本酒をカクテルに用いる魅力を解説。様々な温度帯で使用できること、また醸造酒ではあるがボディがしっかりしているためカクテルにも用いやすいことなどを説明した。座談会後は後閑さん考案の日本酒カクテルの実演と試飲もあり、参加者はカクテルの材料としての日本酒の大きな可能性を実感することができた。
【第2部】
第2部は、2007年から11年まで日本のフランス大使を勤め日本文化に造詣の深いフィリップ・フォールさん、日本料理「青柳」の店主である料理人の小山裕久さんによる料理と日本酒に関する会談。モデレーターは駐仏日本大使の木寺昌人さん。日本酒が様々な食事に合う例として、牡蠣、ショコラ、鶏肉、フロマージュ、寿司を挙げた。また、日本とフランスでは味覚の共通点があり、今後はフランス料理にも積極的に日本酒をあわせていくべきだと話した。
【第3部】
第3部はアラン・デュカス・グループのヘッドソムリエ、ジェラール・マルジョンさんと1995年の世界最優秀ソムリエで日本酒にも詳しい田崎真也さんの「ソムリエから見た日本酒」についての対談。モデレーターはロワゾー・グループのベランジェール・ロワゾーさんが務めた。
アラン・デュカスのレストランでは日本酒を提供しているだけでなく、石川県金沢で専用の日本酒を造っているという。日本酒をフランス料理に合わせるのであれば、白ワインソースやクリーム、またサシの入った和牛、フォアグラなどと合うといった話が出た。
質疑応答では会場の参加者から、日本酒にデキャンティングは必要か、レストランにて日本酒を知らない客にどのように勧めればいいのか、といった実務的な質問が多くされ、フランスのレストラン業界での日本酒需要の高まりを感じることができた。(恵)