牛のサーロインfaux-filetなどを焼いたら、まず、レストランでも定番の一つのコショウ風味ソースsauce au poivreだ。黒コショウの粒をすり鉢に入れ、すりこぎでたたくようにして粗くつぶす。あるいはまな板にコショウをのせ、布巾をかぶせてからたたいてもいい。ベシャメルソース作りの要領で、バターと小麦粉でルーを作り、牛乳のかわりにビーフのキューブcube de bouillon de boeufを水で溶いて加える。くだいたコショウとヴィネガ―を入れ、やや煮つめたらコショウ風味を増すためにコショウ適量をひき入れ、軽く塩をする。
少々手間はかかるが、ワイン屋風ソースsauce au marchand de vinもおすすめ。エシャロットをみじんに切って鍋にとり、ワイン、ヴィネガーを注ぎ、ローリエ、タイムも加え、軽く塩、コショウし、中火にかけ、沸騰させる。半分の量になるまで煮つめたら、ローリエとタイムをとり出す。小さく切って冷蔵庫に入れておいたバターを、泡立て器で混ぜ合わせながら一つ一つ混ぜ入れる。どちらのソースも熱くしておいたソース入れに入れて添えたい。
子牛肉を焼いたら、生クリーム、マッシュルーム入りノルマンディー風ソースsauce normandeだ。肉を焼く前に、マッシュルームを薄く切り分け、フライパンでさっといため、水気を飛ばす。フライパンにバターと油少々をとって、子牛のロースを両面に軽く焼き色がつくまで焼き、とり出す。フライパンは洗わず、リンゴの蒸留酒カルヴァドスを加える。木のへらを使って肉のうまみを溶け込ませたら、マッシュルームと生クリームを加える。弱火でしばらく火を通し、子牛肉を戻してソースを絡め、きざんだパセリを散らす。
豚のロースなら、豚肉屋風ソースsauce charcutière。フライパンで肉にきれいな焼き色がつくまで焼いたらとり出す。ソトゥーズなどにバターをとり、二つに切り分けて薄く切った玉ネギを色がつくまでいため、白ワインを注ぐ。軽く煮つめたら、トマトピューレ、マスタード、薄く小口切りにしたコルニションを加え、好みでタバスコソースも数滴垂らす。沸騰したら弱火でしばらく火を通し、肉を戻して温め直す。
これだけソースおぼえたら、あなたはもう立派なシェフ!(真)
- Sauce au poivre:
バター40g、小麦粉30g、水400cc、ビーフのブイヨンキューブ1個半、ヴィネガー大さじ1杯、黒コショウの粒大さじ1杯、コショウ、塩 - Sauce au marchand de vin:
エシャロット2個、赤ワイン250cc、タイム一枝、ローリエの葉1枚、バター60g、レモン半個のしぼり汁、パセリ適量、塩、コショウ - Sauce normande:
マッシュルーム500g、カルヴァドス(なかったら白ワイン)大さじ3杯、ポマード状生クリームcrème épaisse 250g、塩、コショウ - Sauce charcutière:
玉ネギ1個、白ワイン半カっプ、トマトピューレ200g、マスタード大さじ1杯、コルニション10数個、バター、塩、コショウ
Beurre maître d’hôtel
レストランで、きれいに焼き上げられたステーキの上に、beurre maître d’hôtelというパセリ入りのバターのかたまりがのっていることがある。ちなみに、メートルドテルというのは、ちょっとしたレストランで接客担当の責任者のこと。室温に置いてポマード状に柔らかくしたバターに、きざんだパセリ、レモンのしぼり汁、塩を加え、練り混ぜたものだ。レストランでは、直径4センチほどの筒状にしてから冷蔵庫に入れておき、注文に応じて切り分けるのだが、4人分の量では筒状にするのは無理、適当な器に入れて食卓に出すことにしよう。
Cuire un steak
ステーキは、家庭でもそれぞれ好みの焼き加減をきいてから焼きたい。フランス人が好きな「セニャンsaignant(レア)」なら、肉が薄いとむずかしいから、肉屋で四人分なら厚めに二枚切り出してもらう。焼く一時間前に肉を冷蔵庫から出し、肉を二つに切り分けて四枚にし、軽くたたく。フライパンにバターと油を半々にとり中強火にかける。バターがとけて泡立ちジュージューいいはじめたら、肉を入れる。二、三分できれいな焼き色がついたらひっくり返し、セニャンならもう二、三分で焼き上がる。ここで、塩、コショウ。肉の芯にややバラ色が残っている感じのア・ポワン(ミディアム)なら三、四分です。
ステーキの付け合わせは、小さく切り分けてからカリカリッといため上げたジャガイモ、塩ゆでしたサヤインゲン、辛みが少々あるクレッソン菜のサラダなど。
Fond de veau
レストランでソース作りに欠かせないのが、子牛の骨や落ち、さまざまな野菜をベースに作られたフォン・ド・ヴォーだが、家庭で用意するのちょっと無理。そこでインスタントの粉末に頼ることになる。この粉末を適量の水で溶いたものを、バターと小麦粉で作ったルーに加えたり、フライパンに付いている肉のうまみを溶け込ませたりするわけだ。ブランケット・ド・ヴォーなどの肉の煮込み料理にも、小さじ1杯ほど振り入れれば、うまみが増すだろう。