Un.e Air.e de famille 家族の類似(場所)
サン・ドニ市のポール・エリュアール歴史美術館で、シュルレアリストたちの反植民地運動を縦糸に、現代アフリカ女性美術家の作品を横糸にして構成した展覧会を開催中だ。同じ展示室で、シュルレアリストたちの資料と現代アフリカの作品を同時に見せている。
美術館に名前が冠されたエリュアールはシュルレアリスムの詩人。本展は、この美術館が所蔵するエリュアール関連の資料を元にしている。1920年代、アンドレ・ブルトンを首領とするシュルレアリストたちは、新しい価値観を求めて非西洋美術に注目した。最初はエキゾチスムで見ていた。しかし、フランスの植民地モロッコで住民とフランス軍の大規模な戦いがあった1925年頃から、非西洋を植民地としたフランスに疑問を抱くようになった。そして1931年、パリ郊外のヴァンセンヌの森で植民地博覧会が開催される直前、「植民地博覧会には行くな」という檄文を発表したのだった(写真上)。
1950年代は、インドシナ戦争に従軍した兵士アンリ・マルタンが、停戦を求める檄文を配ったことで有罪判決を受けたことに対し、エリュアールらがマルタン支援の展覧会を開いた。この時はピカソやレジェがマルタンの肖像を描いて出展した(下)。
シュルレアリストたちが植民地主義に反対したことは、一般にはあまり知られていないという。展覧会は、その知られざる部分の延長線上に現代のポスト・コロニアリズムを据えて、女性美術家たちが作品を通して問題提起したことにつなげている。
チュニジアの英国教会の内部に集まったチュニジア人たちが、英国へのビザを申請したときに受ける尋問に対し、集団でノーと答えるナディア・カアビ・リンケのビデオは、移民にテロリストの疑いをかける英国への皮肉であり、今も続く西洋と非西洋との断絶を表している。
シュヴァルム姉妹は、ナイジェリアなどに滞在したときに植民地主義の爪痕を知り、膨大な資料をもとに19世紀のブルジョワ家庭のインテリアを再現した。一見、普通のインテリアだが、よく見ると植民地の人々への暴力を描いた飾り皿や家具がある。ブルジョワの裕福さが奴隷制やアフリカの資源の搾取から成り立っていたことを端的に見せている。
ジェンダーをテーマにしたのはオワントだ。ガボンの親戚の家の引き出しから、性器切除を受けた少女の古い写真を発見し、大きなショックを受けた。写真を拡大して切除された部分をピンクの造花で覆い、切除の儀式に立ち会った女性たちの顔を赤い造花で覆って作品にした。儀式に立ち会った女性たちは自らも切除を受けた被害者であると同時に、女性性器削除という「伝統」を続ける社会を象徴しているのだという。
生まれた国の外や複数の国で活動する作家が多いことから、国籍は記されていない。
本展は、アフリカの芸術、文化、科学、経済などを1年に渡り幅広く紹介するイベント「アフリカ2020」の一環として開催された。(羽)
11月8日まで
月水金10 :00-17 :30 木10 :00-20 :00 土日14 :00-18 :30
入館料:5€ 割引料金:3€
Musée d’art et d’histoire Paul Eluard
Adresse : 22 bis, rue Gabriel Péri , 93200 Saint-DenisTEL : 01 83 72 24 55
URL : http://www.musee-saint-denis.fr
Métro :13号線Porte de Paris下車 3番出口から徒歩5分