Salon de Montrouge 2023
パリ南郊モンルージュでは、毎年、新進造形作家の公募展「サロン・ド・モンルージュ」が開かれる。公募展と言ってもかなりセレクトされ、今年は2000以上の応募書類から36名と1グループ、ベテランの招待作家2名が選ばれた。
選択基準は作品の質、地理的・社会的な多様性、経歴で、美術学校を出たばかりの若者ではなく、ある程度経験を積んだアーティストが対象だ。すでにギャラリーがついている人は外される。開催中に、さまざまなアーティスト・レジデンスから誘いがあったり、ここで得たコンタクトが新たなプロジェクトに繋がったりするという、将来のキャリアにつながる重要なサロンなのである。建築、デザイン、出版、映画の作家も含まれる。
1955年にモンルージュ在住のアーティストが中心となって始まったが、そのうちフェルナン・レジェやピカソなどの有名作家の展覧会となった。現代美術だけの展覧会になったのは1976年以降。ここに出展することがアーティストのキャリアを広げると見做されるようになったのは2009年からだ。
主催はモンルージュ市で、アーティストにつき1000ユーロを支給する。昨年まで賞があり、受賞者名が発表されていたが、今年からなくなった。他国を見ても美術界では賞を出すのが時代に合わなくなった、とコミッショナーは言う。アーティストが競争したくない傾向にあるという。
今年の特色は、羊毛やセラミックといった伝統技術を使ったもの、心身をテーマにしたもの、考古学と未来のフュージョン、環境破壊を意識したものなどだ。
テオフィル・ペリスはThéophile Peris (1997-)は、拾った動物の骨に彫刻したり、粘土を捏ねてオブジェにし、古いものか未来から来たものかわからない作品を作った(冒頭の写真)。
サラ・イルズ&マリウス・エスカンド Sarah Illouz& Marius Escandeのカップルは、羊飼いから羊毛卸業者まで、羊毛生産に関わる人たちと接触し、時間をかけて伝説をモチーフとしたタペスリーを作った。(下の写真)
招待作家のひとり、マルジョレーヌ・ドグレモン Marjolaine Degremont (1957-)は、新型コロナウィルスが蔓延していた頃、汚染、崩壊と同時に創造のシンボルとなるようなキノコを描いた。「菌糸が世界を覆うだろう」という題名は、90年代にエイズに感染し、エイズと闘うN G O、アクト・アップの活動家となった彼女にとって、危険ともなりうる菌糸の繁殖力と、エイズ撲滅のためにつながった女性たちのネットワークを象徴しているという。
今後有望な新進作家たちの作品が見られるのは今週末まで。入場無料。(羽)
Salon de Montrouge
Adresse : Beffroi de Montrouge, Place Cresp , Montrouge , Franceアクセス : Mairie de Montrouge(駅から徒歩2分)
URL : http://www.salondemontrouge.com