Saint-Ouenで、大きくなるパリ首都圏を体感する。
グラン・パリのメトロ、実物大の車両や駅を体験。
La Fabrique du Métro
この町に来ると実感できるのだが、グラン・パリ大首都圏計画で、パリと郊外の境は消えつつある。その軸となるメトロ 「グラン・パリ・エクスプレス(以下GPE)」は、南北に延びる14番線、パリを大きく囲むように走る15番線、パリ北東部の16番線、サン・ドニとロワシー=シャルル・ド・ゴール空港を結ぶ17番線。オルリー空港からヴェルサイユへ、2030年以降にはサン・ドニまで伸びる18番線の計5線(上の写真)。
空港、卸売市場、病院、研究所などの活動拠点を通る全200kmの敷設計画で、周辺には25万から40万戸の住宅が造られ、完成すると1日に300万人近くが利用する。地中では10基ほどの掘削機が24時間休まずにトンネルを掘り続けている。今は工事で不便もあるが、整備されれば郊外から郊外への移動もパリを通らず効率的になる。68の新しい駅のうち、隈研吾氏が設計した、GPE全線が乗り入れるサン・ドニ・プレイエル駅は6月にもオープンする予定だ。
「ファブリック・デュ・メトロ」はそんなGPEを知るためのミュージアム。実物大の新しい車両や駅が体験できる。今展示されている車両は2020年のプロトタイプだが、改良されるにつれ新しいモデルに入れ替わるそうだ。新しい駅、車両内では照明は体内時計に合わせ朝は夜よりも明るく設定、車内でもwifi完備でUSBや電源ケーブルの接続ができる。パリのメトロの速度は25-40km/h(騒音は少ない)だが、車輪がゴム製で、ほぼ2年おきにタイヤ交換を必要とする。いっぽう新しいGPEは車輪は鉄製で速度は55km〜65km(最速時110km)、エネルギー効率もいいという。掘削現場のようなほの暗い展示室では、掘削機のメカニスム、環境負荷が少ない素材のレール、鉄筋コンクリートに比べ鉄の量が半分ですむ鉄ファイバーを含んだコンクリート、掘り出された土で作る建材などについても学べる。
また、地下鉄を敷くのは掘る前から大変だ!ということも学んだ。地質調査をし、必要なら補強、汚染除去。石切場が多かったパリとその周辺は「グリュイエールチーズのように」地中に空洞が多数あるので、それを埋めることもある。考古学調査も必要だが、生物多様性も守らないといけない。すでに地中にあるケーブル類、ガス・水道管などの移動、線路を敷く土地の所有者から国が土地を買う…。水面下ならぬ地下で、2012年から数々の準備が進められてきていたことに胸を打たれた。
Fabrique du Métro :
Parc des Docks Travées E et F,
50 rue Ardoin bâtiment 563, 93400 Saint-Ouen-sur-Seine
M°Mairie de Saint-Ouen Tél : 01.8246.2236
土日休、月-金 8h-19h 無料、要予約 (見学は90分)
www.grandparisexpress.fr/fabrique-du-metro/visiter
展覧会「広がるグラン・パリ大首都圏交通網」
※ こちらの展覧会は終了しました。
パリ16区、トロカデロにある建築博物館でもメトロに関する展覧会が開催中(こちらの展覧会は終了しました)。1900年のメトロ開通から、63年の郊外線RER、そしてGPE計画。新しいGPEの駅の建築については模型や写真も多く、サントゥアンより詳しく見せている。
建築家とアーティストがペアを組んで駅舎をデザインするプロジェクトも興味深い。塑像家エヴァ・ジョスパン氏、電子音楽・現代美術作家の池田亮司氏らも参加しているし、Saint-Denis Pleyel駅を設計した隈研吾氏は、1985年生まれのアーティスト、プリューヌ・ヌリーとのコラボレーションとなっている。 6/2まで。
Métro! Le Grand Paris en Mouvement :
Cité de l’architecture et du patrimoine
1 place du Trocadéro 16e
Tél : 01.5851.5200 M°Trocadéro 火休、11h-19h (木 -21h)。
9€/6€/18歳未満無料
www.citedelarchitecture.fr