ロシアがウクライナに侵攻を始めてから、パリの「ウクライナ文化センター」が発信力を高めている。「ウクライナの春」と題し文化イベントを行なっているのだ。ウクライナ人音楽家によるチャリティコンサート、作家の講演会、上映会など、全て無料。映画上映会の後は、来仏した監督のトークなどもある。
そうしたイベントの中で、先月から開催されているのがウクライナ在住の気鋭の写真家の合同展「征服されない人々 Les indomptables」だ。戦時下の市民の日常を捉えた写真が展示されている。
コミッショナーのソロミヤ・チャフスクさんはキーウの現代美術館「ミステスキ・アースナル」の主任キュレーター。ビデオ作家1人と、若手から国際的に著名な人まで7人の写真家を選んだ。
3月12日に撮影されたミハイル・パリンチャークの作品には、瓶が詰まった段ボールの後ろに白い袋の山が見える。「瓶は市民が作る火炎瓶。政府がS N Sで火炎瓶の作り方を教えているのです。袋は(戦車などの走行を止める)バリケードに使う土嚢です」とチャフスクさんは説明した。別の写真では、公共の建物のホールで男性がゼレンスキー大統領の演説をスマートフォンで聞いている。周りにいる人の様子からも緊迫した空気はそれほど感じられない。2月28日は、銃を肩にかけ、ペットを入れたカゴと水生動物が入っているらしい水槽を抱えて立入禁止区域から出てくる人を撮った(冒頭の写真)。戦闘に参加する前に、誰かにペットを預けに行くのだろうか。パリンチャークはストリート・フォトグラファーで、多くの賞を受賞している。
アレクサンダー・グラディエロフは、激しい戦闘が行われ、ロシアの空爆を受けたイルピンに入り、避難する人とそれを助ける市民や兵士の姿を撮った。子供や老人の手を引いて破壊された自然の中を歩く。人間が人間を助けるという当たり前のことを見てホッとすると同時に、この人たちは無事にどこかにたどり着くことができるのだろうかと不安になる。戦車も爆撃も写っていないが、紛れもなく戦時中の写真だ。
軍隊のためにカムフラージュの布を織る人たちを撮ったのは、フォトジャーナリストのオレクサンドル・ホメンコだ。静かな教会の美しい内装と、そこで戦闘のためのものを作るという行為の対比が強烈だ。
展覧会初日は、駐仏ウクライナ大使夫人のナタリア・オメルチェンコさん、文化参事官のヴィクトリア・グレンコさん、前述のソロミヤ・サフチュクさんが挨拶した。ウクライナは主権と民主主義のためにロシアと戦っている、もうすぐ勝つだろう、戦後どうするかが課題だと語った。
展覧会では全作品を販売し、売上はウクライナにいる写真家たちに送るという。同じ作品でも大中小の3サイズがあるので、手の届く価格を選ぶことができる。
文化センターは毎週新しいイベント情報を出している。ウクライナの人たちの生の声を聞くまたとない機会だ。展覧会と合わせて参加してみてほしい。(羽)
※写真展は5月24日まで。
Centre culturel de l’Ambassade d’Ukraine en France
Adresse : 22 avenue de Messine, 75008 Paris , Franceアクセス : Miromesnil
URL : https://www.facebook.com/printempsukrainien
月〜金 : 11h-19h 、土14h-19h