L’art et la matière, prière de toucher
一般に「芸術品には触るのはNG」が美術館のルール。だが、その逆を行く展覧会がノルマンディー地方ルーアンの美術館で開催中だ。「芸術と物質、触ってください L’art et la matière, prière de toucher」展は、美術品に触れることが大前提。視覚主義に陥りがちな私たちに、別の角度からの芸術鑑賞を促すと同時に、子どもや視覚障害者らすべての人に気軽に文化に触れる機会を提供する。
展示室には人間の彫像を中心に数十の作品が鎮座する。2500年前のギリシャの胸像から20世紀のブールデルやマルタ・パンの作品まで時代は様々。全てレプリカなので、心ゆくまで触っても叱れられることはない。
推奨される鑑賞方法は、誰かとペアを組むこと。一人は目隠をし、触感だけでどんな作品かを当てる。もう一人はその人を作品まで安全に誘導し、必要に応じて助け舟を出す。これはゲームのようで楽しい経験だ。筆者は博学そうなおばさまとペアを組んだが、尖った顎を触っただけですぐに「ヴォルテール!」と当てていたのに驚いた(冒頭の写真がヴォルテール)。
一方、自分は作品当ては難しかったが、触覚だけを頼りに作品に出会うことで、より作り手と親密な対話を結べた気がした。時間や空間感覚を超えた没入感にも誘われる。コロナ禍では「距離を取れ」「消毒しろ」と言われ続けてきたが、「触って感知すること」は原初的な欲求だ。
本企画はモンペリエのファーブル美術館とルーヴル美術館が監修、ルーアンの他にリヨン、ナント、リール、ボルドーの美術館と共同開催の巡回展だ。パリの開催はないので地方旅行の予定と組み込むのも良いだろう。9月18日まで。(瑞)
ルーアンの町を観光しよう。
さて、印象派が愛したルーアンはパリから電車で1時間半。見所が中心地に集まっているので、日帰りで充実の観光を約束する。モネが連作を描いたゴシック様式の大聖堂はレースを思わす壮麗さ(ルーアン美術館常設展で大聖堂の絵画が鑑賞可)に目を奪われる。至近距離にはもう一つの町の顔の大時計台(Ruedu Gros Horloge)が。時計台の塔内は見学ができ、屋上から素晴らしい眺望が味わえる。
そして「コロンバージュ」と呼ばれる、木材が壁に露出した古い家を眺めながら、サン・マクルー教会裏にある中世の回廊付き納骨堂(Aître Saint-Maclou : 186 rue Martainville)跡まで足を伸ばしてほしい。16世紀、ペストで多くの人が亡くなって墓地が不十分になったために作られた納骨堂で、柱などには頭蓋骨のレリーフが彫られている。
現在はギャラリーやカフェがある観光の穴場で、陶芸職人さんの仕事も見学できるようになったが、2014年までルーアン美術大学があった場所だ。ペストで命を落とした霊たちが徘徊していそうな場所だが、妙に心落ち着く芸術的な空間だ。
また歴史好きならジャンヌ・ダルク歴史館、文学好きならフロベールの家に立ち寄るのも忘れずに。
バックナンバーのルーアン特集もあわせてお読みください。
▶︎ルーアン、尽きない魅力
https://ovninavi.com/652_sp/5/
▶︎ルーアン文学散歩:フロベールとモーパッサンの師弟愛
https://ovninavi.com/797sp/
Musée des Beaux-Arts de Rouen
Adresse : Esplanade Marcel Duchamp / 障害のある方は 26 bis rue Jean Lecanuet, 76000 Rouen , FranceTEL : 02 35 71 28 40
アクセス : SNCF Rouen駅
URL : https://mbarouen.fr/fr
月休、10h-18h、常設展とこの展覧会は入場無料。