
Panais rôti
先細りの大根のような根菜がパースニップpanais(パネと発音)。忘れられていた野菜だが、甘さと軽い苦みをもった味わいにファンが増えていて、どこの八百屋でも見かけられるようになった。冬が旬だが、4月いっぱい、ポトフやボルシチなどの煮込み料理に加えたり、スープにしたりして、パースニップの風味をたのしむことができる。そろそろ出まわってきている新ニンニクといっしょにオーブンで焼いてみた。

パースニップの皮をむき、9センチくらいの長さに切り分け、太いところは二つか四つに切る。ハチミツは、同量の熱湯で溶いておく。ニンニクは、茎を切りとってから水平に二つに切り分ける。ヘーゼルナッツnoisetteは、すり鉢にとって、すりこぎの先で細かくくだいておく。
オーブンの目盛りを180度に合わせて点火する。天板にクッキングシートを敷く。
パースニップをボウルにとってオリーブ油、ハチミツを加えて混ぜ合わせ、クッキングシートの上に重ならないように並べる。ニンニクも置いてから、塩、コショウを振りかけ、タイムの葉を散らし、熱くなっているオーブンに入れる。パースニップの焼き時間は太さ次第で多少変わるけれど、30分ちょっとたったら串を刺してみて、すっと通れば焼き上がっている。
即座にヘーゼルナッツ入りバターソースの用意。といっても至極簡単、小鍋にバターをとって中火にかけ、バターがとけたらヘーゼルナッツを加え、絶えず混ぜ合わせつつ2分たったら火からおろし、スプーンでパースニップ全体にぬりつければでき上がり。
ハチミツの甘さ、ヘーゼルナッツの香りが、パースニップ本来のうまみをみごとに引き立てていて、思わず「セボン!」と叫びたくなるだろう。そして優しい味わいの新ニンニクのうまさ!子牛のロース肉のソテーやトゥールーズ風ソーセージsaucisse de Toulouseの、またとない付け合わせになるだろう。これだけ手をかけたのだから、赤ワインは、コット・デュ・ローヌの名酒サン・ジョセフをあけたいくらいだ。(真)
4人分:パースニップ800g、新ニンニク1個、ハチミツ大さじ1杯、ヘーゼルナッツ大さじ3杯、バター50g、タイム4枝、オリーブ油適量、塩、コショウ
Panais

パースニップはヨーロッパ原産で、ローマ時代から食用とされていた。フランスでは忘れられた野菜だったが、英国では常に人気の根菜だ。ニンジンのような香りがあり、甘みが濃い。この甘さを引き立たせるために、砂糖やハチミツを振りかけてからローストするのが定番となっている。カブより煮くずれしにくいのでポトフに入れるのもおすすめ。ピュレにしたり、薄く切ってチップスにしたり、といろいろと試してみたい。和風にニンジンと半々にきんぴらにするのも悪くない。歯ざわりがボソッとしているので生食には向かないと思う。
Ail nouveau

20センチくらいの茎付きで、表面が赤紫色がかったりしている、乾燥される前の新ニンニクは、4月くらいから出まわる。白く小さめの身は、匂いも柔らかく、ニンニクぎらいの人も試してほしい。クルジェット、トマト、ピーマンをオーブンで焼くときにも、輪切りにした新ニンニクをのせて焼くといい。もちろんサラダドレッシングにも入る。茎は、細かくきざんでから野菜のタルトに加えたり、ニンジンやジャガイモといっしょにポタージュに。
Noisette

8月くらいから殻付きのヘーゼルナッツ(ハシバミ)noisetteが手に入る。固い殻をクルミ割りで割ってミルキーな味わいをたのしむ。チーズ盛り合わせに添えても喜ばれる。殻をとってから乾燥させた、丸ごとあるいは粉末状のものが年中手に入る。丸ごとをくだいてからクッキーに入れたり、粉末状でケーキやマカロンを焼いたりする。料理につかわれることは少ないが、真ダラの切り身を焼いて、今回のレシピのヘーゼルナッツ入りバターソースにレモンのしぼり汁を加えたものをかけるとうまい。子どもたちが大好きなクレープに入れたり、パンに塗ったりするチョコレート風味のスプレッド、ヌテラNutellaもヘーゼルナッツがベースだ。
