Olivier Messiaen “Quatuor pour la fin du Temps”
フランス人作曲家オリヴィエ・メシアンは、1940年にドイツ軍の捕虜となり、1941年2月までゲルリッツ収容所に収容された。この収容所では音楽家が優遇されていて、メシアンは捕虜の義務を免除され、『ヨハネの黙示録』に霊感を受けつつ『時(世)の終わりのための四重奏曲』の作曲に専念できた。同じ収容所にいた音楽家3人と、ピアノが運ばれてきた40年11月から毎日4時間練習をつみ、1941年1月に初演された。
それから80年、ヴァイオリン奏者イザベル・ファウスト、クラリネット奏者ヨルク・ヴィトマン、チェロ奏者ジャン=ギアン・ケラス、ピエール=ローラン・エマールがゲルリッツ収容所を訪れて数日間滞在し、記念館でこの曲を演奏した。
ソロあり、デュオあり、トリオあり、カルテットありの奥行きの深い曲だが、いずれも各楽器の当代きっての名手だけに、パートナーの演奏に鋭く耳を傾けながら、緊張感あふれる演奏を繰り広げる。キリスト教信者であろうが無神論者であろうが、精神の高みへと導かれていくだろう。曲の間にはさまれる音楽家たちの言葉も興味深い。その貴重なライブがArteのreplayに8月2日までアップされている。(真)
この録画では曲が一部カットされているので、全曲を聴きたい人には、クラリネット奏者パスカル・モラゲスが加わったトリオ・ワンダラーの熱演盤がある(冒頭の写真)。Harmonia Mundi/10€前後