パリ国立自然史博物館の古生物学と比較解剖学のギャラリーに、「デュルフォールのマンモス」が帰ってきた。劣化のため修復、洗浄をほどこされ、6月28日から一般公開された。
高さ4m、全長7mのこのマンモス標本は、展示室の中でも特に存在感を放っている。マンモスの標本が、これだけ骨のパーツが揃い、骨格を復元されているのは世界でも珍しいとのこと。
このマンモスは、メリジオナリスゾウというゾウ科マンモス属の一種。1869年にフランス南東部ガール県のデュルフォール(Durfort)で発見された。そして1878年のパリ万博で披露されるために自然史博物館にやってきて以来約150年間、訪れる人たちに古生物の魅力を伝え続けてきた。しかし、湿度や温度の変化、大気汚染、長年の展示による劣化が認められ、ギャラリーのチームが修復の決断に踏み切ったという。
修復にあたっては寄付金が集められ、2100人の寄付者から合計約195,000€が集まった。2022年5月に始まった修復作業には文化財修復の専門会社Aïnuを中心として、研究者やエンジニア、博物館のスタッフなど、合計で100名以上の関係者が携わったそうだ。
新たな発見の数々
このマンモス標本、修復に伴って行われた調査で多くの発見があったという。
まず分かったのが、このマンモスの詳細なプロフィール。修復以前は約200万年前に生息していたと考えられていたが、調査によって120万年前から70万年前のマンモスだという説が強まった。さらに分析によって、マンモスの性別はオスで、25歳で死亡したということも分かった。
この標本が発掘された当時は、古生物の保存法や管理が現在ほど発達しておらず、限られた知識の中でこのマンモスが扱われたことが今回の調査で分かった。例えば、1869年のデッサンからはアジアゾウに近い特徴が見られる一方で、標本にはそのような特徴は見られなかった。この謎を解くために3D解析が行われ、マンモスの頭蓋骨に石膏や木材、金属などが含まれていることが判明した。19世紀に手が加えられ、本来の頭蓋骨の特徴が失われてしまったのである。
今回の修復では、150年前に修正された部分もそのまま保存されている。100万年前のみならず、19世紀の歴史も背負ったのがこのマンモス標本だというわけである。
こちらのマンモス標本は、パリ5区植物園(Jardin des plants)内にある古生物学と比較解剖学のギャラリー2階(フランス式1階)に常設展示されている。一般入館料は10€、26歳以下は入館無料。パリでの休日のプランに組み込んでみては。(赤)
Musée national d'Histoire naturelle - Galerie de Paléontologie et d'Anatomie comparée
Adresse : 2 Rue Buffon , 75005 Paris , FranceTEL : 01 40 79 56 01
アクセス : メトロ5番線 Gare d'Austerlitz駅すぐ
URL : https://www.mnhn.fr/fr
10€、25歳未満は入館無料。