
©︎Jean-Baptiste Gurliat/Ville de Paris.
Musée des égouts de Paris
パリの下水道見学ツアーが始まったのは1867年の万博の時だというから、エッフェル塔よりも前から、違った角度からパリを見せてきた社会見学コースといえる。今日でも年間10万人が訪れる人気のスポットだ。2018年から改装工事で閉めていたが、2021年、常設展も新たに再オープンした。
全長2600kmにおよぶパリ下水道。大通り、小路、環状道路…大中小の街の通りごとに下水道が配されている。そこに地上の通り名のプレートがつけられた「地下の町」が広がっている。
下水道にも〈等級〉がある。各建物から支管 branchements が各通りの小下水道 égouts élémentaires へ延び、さらに副本線 collecteurs へ、大通りの地下には本線 collecteurs principaux。それらが今度は émissaires とよばれる太い管に合流して、下水処理場へと流れてゆく。
パリ下水道の特徴は、高いところから低い方へと流れる「自然下流式」で、ポンプ使用がわずかなこと。また、ほとんどが雨水と汚水が同じ管を通る「合流式」。だから大雨になると下水道は水でいっぱいになり、ポンプを使ってセーヌ川に放出される。そのため、2024年パリ五輪から、この夏は一般もセーヌで遊泳可能となったものの、降水量が多いと泳げなくなるのだ。

パリ市の中心、クリュニー博物館あたりでローマ時代の下水道跡が発掘されているというほどパリの下水道の歴史は長いが、今日のような形になったのは1853年に始められたオスマン男爵の「パリ大改造」によるもの。それまで下水道のない場所では、「水に注意!」と叫んで窓から通りに汚水を捨てていたというのはもはや都市伝説だ。また1832年、1849年にはコレラが蔓延。当時、人口が100万人に達していたパリは、下水道の整備とともに近代都市となった。
昨今はネット上で「クリック」することで多くのことが出来るが、下水道の世界はそう甘くはない。「地下の町」では日々約300人の職員が働く。落ち葉、ペットボトルなどゴミで下水道が詰まるのを手で、道具で、または管の中を大きな球を使って掃除したり、水底にたまる砂や泥を舟で除去する大規模な作業も行う。
ある職員さんは下水道を「町の腸」と表現した。「パリ住民、200万人のね」と。見学で得たのはその感覚だ。下水道が自分の体と直結し、自分の体の一部のような感じがして、いとおしく思えるのだった。(六)


Musée des égouts de Paris
Adresse : 93 Quai d'Orsay / Pont de l'Alma アルマ橋たもと Place de la Résistance , 75007 Paris , FranceTEL : 01.5368.2781
アクセス : Pont de l'Alma (RER C)/ Alma Marceau
URL : https://musee-egouts.paris.fr/
アルマ橋左岸側) 入場料9/7€(18歳未満無料) 火-日 10h-17h、月休。
