Musée des égouts de Paris
2018年から改装工事のために閉まっていた下水道ミュージアムが再オープンした。パリの下水道見学ツアーが始まったのは1867年の万博の時だというから、エッフェル塔よりも昔から、違った視点からのパリを見せてきた社会見学コースといえる。今日でも年間10万人が訪れる人気のスポットだ。
全長2600kmにおよぶパリ下水道。大通り、小路、環状道路…大中小の街の通りごとに下水道が配され、地上の通り名のプレートがつけられた「地下の町」。
下水道にも等級があって、各建物から支管branchementsが各通りの小下水道 égouts élémentairesへ延び、さらに副本線collecteursへ、大通りの地下には本線 collecteurs principaux。それらが今度はémissairesとよばれる太い管に合流して、下水処理場へと流れてゆく。
パリ下水道の特徴は、高いところから低い方へと流れる「自然下流式」で、ポンプ使用がわずかなこと。また、ほとんどが雨水と汚水が同じ管を通る「合流式」。だから大雨になると下水道は水でいっぱいになり、ポンプを使ってセーヌ川に放出される。2024年パリ五輪ではセーヌでも競泳が行われるが、「放出水の成分は随時測定するので問題ないですよ」と測定器を見ながら説明があった(大雨になりませんように!)。
ローマ時代の下水道跡がクリュニー博物館あたりで発掘されているというほどパリの下水道の歴史は長いが、今日のような形になったのは1853年に始められたオスマン男爵の「パリ大改造」によるもの。それまで下水道のない場所では、「水に注意!」と叫んで窓から通りに汚水を捨てていたのは 有名な話だ。また1832年、1849年にはコレラが蔓延。当時、人口が100万人に達していたパリは、下水道の整備とともに近代都市となった。
昨今はネット上で「クリック」することで多くのことが出来るが、下水道の世界はそう甘くはない。「地下の町」では日々約300人の職員が働く。落ち葉、ペットボトルなどゴミで下水道が詰まるのを手で、道具で、または管の中を大きな球を使って掃除したり、水底にたまる砂や泥を舟で除去する大規模な作業も行う。ある職員さんは下水道を「町の腸」と表現した。「パリ住民、200万人のね」と。見学で得たのはその感覚だ。下水道が自分の体と直結し、自分の体の一部のような感じがして、いとおしく思えるのだった。(六)
Musée des égouts de Paris
Adresse : 93 Quai d'Orsay, 75007 ParisTEL : 01.5368.2781
URL : https://musee-egouts.paris.fr/
アルマ橋左岸側) 入場料9/7€ 火-日 10h-17h、月休。