Amedeo Modigliani Peintre et son marchant
この秋、ぜひ見ておきたい展覧会の一つである。モディリアーニ(1884−1920)の油彩22点、彫刻8点、写真8点のほか、デッサンと資料で、彼の最初の画商ポール・ギヨーム(1891-1934)との関係を見せる。会場のオランジュリー美術館は、ギヨームのコレクションと、彼の死後、妻のドメニカが再婚した夫ジャン・ワルテルと補充したコレクションを礎にしてできたことを振り返ると、オランジュリーならではの企画展と言えるだろう。
1906年にイタリアからパリに出てきたモディリアーニは、1914年、友人で詩人のマックス・ジャコブを通してギヨームに出会った。ギヨームは23歳で画商になった早熟な人で、モディリアーニが没するまで彼を励まし、その作品を世界中に広めた。扱ったモディリアーニ作品は100点以上と言われる。
二人が出会った時、モディリアーニは彫刻をやめて絵に専念していたが、ギヨームは彼の彫刻も扱い、画家の死後、米国のアルバート・C・バーンズのような有力なコレクターに売った。アフリカの彫刻や仮面を美術品とみなした当時数少ない画商で、アフリカ美術に関心があったモディリアーニと感性が近かった。
モディリアーニの2人目の画商で女性のヌードを多く扱ったレオポルド・ズボロフスキーとの関係も外すことはできない。この画商との関係を取り上げた展示室にあるのは、肖像画と女性のヌードだ。
モディリアーニの生涯も作品もあまりに有名なので、ここで付け加えることは特にないが、これだけの数の作品を見ていると、共通点に気づく。顔と首が長いこと、頭が傾いていることはよく指摘されるが、それに加えて肖像画でもヌードでも、影が描かれておらず平面的だ。人物の頭の上部が切れている絵もあるのは、顔を思うように描くことができれば、その他の部分はそれほど重要ではないということなのだろうか。そしてズボロフスキー時代の肖像画のサイズはほぼ同じだ。
眼球が描かれている肖像画は人間くさいが、眼球が塗りつぶされている肖像画は「絵ではない何か」にも見える。モディリアーニが影響を受けたアフリカの仮面の中には、精霊やあの世との交流に使われたものもある。モディリアーニが描いた仮面顔の穴のような目には、見る人を吸い込み、別の世界に導く力がある。
会場の最後に、ギヨームの住居兼画廊の内部を映したビデオがある。壁にモディリアーニ、セザンヌ、ピカソ、マティスなど、錚々(そうそう)たる画家の作品が架けられている。すぐ隣の常設会場に入ると、ビデオで見たばかりの居間の内部がミニチュアで表現されているではないか。特別展と常設展の境界線が低い、珍しい展覧会だ。(羽)2024年1月15日まで
Musée de l’Orangerie
Adresse : Place de la Concorde (テュイルリー公園内 /セーヌ川寄り) , 75001 Paris , FranceTEL : 01 44 50 43 00
アクセス : Concordes
URL : https://www.musee-orangerie.fr
予約推奨 billeterie.musee-orangerie.fr 水-月9h-18h / 金 18h-21h。入館料12.50€ /10€。金曜夜間は10€。18歳未満、EU在住25歳未満は無料。子ども同伴者10€。