Magret de canard à l’orange
どこの肉屋でも売っているカモの胸肉を使って、オレンジ風味の一品を作ってみよう。友人たちを招いたときなどに作ると、拍手がわくごちそうです。
まず胸肉の厚い脂がついている皮に、よく切れる包丁を使って、深めに格子状の切れめを入れる。
次はマリナードの準備。鍋にオレンジのしぼり汁、ハチミツあるいはオレンジマーマレード、しょう油、八角、シナモンをとり、コショウを多めにひき入れ、中火にかける。ややとろりとするまで煮詰めたら冷ます。 胸肉ふたつを重ならないように置くことができる深皿やオーブン皿に、冷めたマリナードを入れ、身の側が下になるように胸肉を置く。1時間漬けることにしよう。
胸肉を焼く前に、付け合わせのマッシュポテトや、新ニンジンのグラッセ(コラム参照)などを用意するといい。
胸肉をマリナードからとり出し、マリナードを丁寧にぬぐう。残っているマリナードはソース用で、中の八角、シナモンはとり出す。フライパンに油少々をとり、まず胸肉の皮の側から焼いていくのだが、皮の下の脂肪を十分に溶け出させたいなら弱火、脂身大好きなら中弱火です。皮にきれいな焼き色がついたらひっくり返す。中火で焼いたならここで弱火にする。もう5分くらい焼けば、真ん中がまだ赤みがかったロゼと呼ばれる最適な焼き加減になるだろう。皿にとり出し塩の華などの粗めの塩を振りかけ、ホイルで皿ごと包んでおく。
フライパンの脂を取り除いてから白ワインを注ぎ、木のへらで混ぜ合わせながらフライパンについている肉のうまみを溶け込ませ、マリナードを注ぐ。絶えず混ぜ合わせながら、ややトロリとするまで煮詰める。
胸肉を1センチほどの厚さに切り分け、熱くしておいた各人の皿に盛りつけ、ソースをかけ、付け合わせを添えて食卓へ。オレンジ風味の甘酸っぱいソースと柔らかなカモ肉の相性にうなってしまう。赤ワインは予算が許したらブルゴーニュ、でなかったらミネルヴォワなどの、コクのあってまろやかな銘酒がほしい。(真)
カモの胸肉二つ(約700g)、オレンジ2、3個、八角一つ、シナモン1本、
しょう油大さじ1杯、ハチミツ大さじ1杯、白ワイン100cc、塩、コショウ
Magret de canard
Magret de canardは、フォワグラ用に飼育されて丸々と太ったカモから切り出された胸肉のことで、ランド県など、フランス南西部が主な産地だ。ひとつが400グラム前後あって二人分。料理法としては網焼きにしたり、フライパンでソテーしたり。いずれの場合も皮に切れ目を入れてから調理するのだが、まず皮の側から焼いていくことが基本だ。焼きすぎは禁物、固くなるし、独特のうまみも消えてしまう。柑橘類のしぼり汁、グリーンペッパー、ハチミツ、バルサミコ酢などで風味を付けたソースがよく合うものだ。和風なら鍋か鴨南蛮!
Confit de canard
カモ肉といえば、もも肉を大量の脂とじっくりと煮込んでその脂ごと缶詰にしたconfit de canardを忘れてはいけない。常備しておくと、不意に友だちがやってきたときなどに重宝する。脂と一緒に鍋にあけ、中弱火で煮直し、マッシュポテトなどを添えれば、ごちそうのでき上がり。どこまでも柔らかなもも肉が美味美味。鍋に残っている液状になった脂を捨ててはいけない。これをふたができる器に入れ冷蔵庫で保存しておけば、ジャガイモのソテーに使ったり、インゲン豆料理やシュークルートに加えたりすれば風味が深くなる。
Carottes glacées
「glacé」は 「光沢をつけた」という意味。ニンジン500グラムは皮をむいて輪切りにする。細めの新ニンジンなら茎少々を残し二つに切り分ける。鍋にとり水をひたひたに注ぐ。バター大さじ2杯、砂糖大さじ1杯、塩少々を加える。硫酸紙を鍋の大きさに切ってニンジンをおおう。真ん中に小さい穴を開け、中弱火にかける。25分ほどたったら硫酸紙をとり、ニンジンに煮汁をからませるようにしながらもう5分ほど、煮汁がすっかりなくなるように火を通す。砂糖とバターでつやつやのニンジンが口の中でとろけそう。