アルザスとロレーヌ地方にまたがる北ヴォージュの森では、15世紀末から今日までガラスづくりの技術が綿々と受け継がれてきた。ガラスの原料となる砂岩、燃料の木、砂の融点を下げるカリウムを含むシダ類などが豊富な森林の谷間、渓流のそばに職人たちは炉を造った。ライン河の向こうのドイツや、ボヘミアからやってくる職人たちもいて、彼らは周辺の資源がなくなると別の場所を見つけてまた炉を造った。
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それが18世紀、工房を一カ所に定着させるようになると、北ヴォージュのガラス産業が本格的に発展する。1704年に操業を始めたマイゼンタールのガラス工房、1715年にはオーベルグにも工房が作られ、1767年にはサンルイが、イギリスに続いて欧州大陸で初めてクリスタル製造技術の開発に成功。19世紀末にはアール・ヌーヴォーのエミール・ガレやドーム兄弟らがナンシーからデザイン画をマイゼンタールに持ち込み熟練の職人たちに作らせた。ルネ・ラリックは1922年ヴィンゲンにガラス工場を創設し本格的な製造に乗り出す。これら生産拠点をつなぐ鉄道が敷かれ、職人、原材料が行き交い、ガラス製品は都市へと運ばれた。
今月オヴニーは、秋深まる北ヴォージュに、ガラスとクリスタルの郷を訪ねます。(集)