友だちを招き、アントレ、メイン、デザート、さらにはデザートの前にサラダなどという凝ったメニューにするなら、手順をしっかり考えてから調理にかかりたい。
最初にメインを決めると手順がよく見えてくる。肉を長時間煮こむポトフやブッフ・ブルギニョン、あるいはチキンや子羊のもも肉を1時間以上かけてオーブンで焼くローストなら、手順がずいぶんらくになる。メインを食卓に出す時間から逆算し、ココット鍋を火にかけたり、オーブンを熱くしてからオーブン皿を入れたりすればいい。途中であくをとったり、焼き汁を肉にかけまわしたりという手間はあっても、火を通している間に、アントレを準備したり、付け合わせを用意したり、サラダの下ごしらえをする時間が十分にあるからだ。
それにひきかえ、ポークソテーとかヒラメのムニエルとか、食べる直前に調理しなければならないものをメインに選ぶと、手順がこみ入ってくる。メインが肉なら余分な脂を切りとったり筋を切ってたたいたり、魚ならおろし身にしたり小骨をとったりなどの下ごしらえしてから冷蔵庫に入れておき、アントレやサラダ、デザートをあらかじめ用意する。そしてアントレを食べはじめる30分前くらいに、肉や魚を冷蔵庫から出しておくのが大切だ。というのも、肉や魚が冷えすぎていると中まで火がとおらないことになるからだ。
アントレの手順を考えてみよう。生ハムやソーシソンの盛り合わせなら、大皿にきれいに並べてラップし、室温に置いておけばいい。スモークサーモンや牛肉のカルパッチョなら、やはり大皿に並べ、ラップして冷蔵庫に入れておく。仕上げに振りかけるアネットやパセリ、バジリコの葉はあらかじめみじんに切っておきたい。アボカドにゆでエビ添えなら、食卓に出す10分前くらいにエビの殻をむき、アボカドを切り分け、色が変わらないように切り口にレモンをぬっておく。
サラダだが、数時間前でもいいから、サラダ菜を専用水切り器essoreuse à saladeで洗ってから水気を切っておき、ドレッシング(ソース・ヴィネグレット)を用意する。ただし、ドレッシングを混ぜ入れるのは食べる直前だ。早めに混ぜ合わせると、サラダ菜がしなっとし、歯ごたえがなくなってしまう。
デザートは、ぼくは、あらかじめ準備して冷蔵庫に入れておくだけでいいフルーツサラダやパンナコッタ、冷めてもおいしいリンゴのタルトやサクランボのクラフティにすることが多い。数時間前につくって乾燥しないようにラップすることさえ忘れなければいい、と手順がずいぶんシンプルになる。
おすすめしたいのは、手順を簡単にメモしておくことだ(コラム参照)。それを見ながら調理すればいいので、あわてなくてすむ。(真)
Pense-bête pour le dîner
手順がいろいろあるときはメモしておくといい。たとえば、夕食のメニューが、アントレに生ハム盛り合わせ、メインにポークソテー、惣菜屋風ソーㇲ添え、ついでグリーンサラダで、デザートはパンナコッタだとすると、こんな感じのメモになる。
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午前中:パンナコッタをつくって冷蔵庫へ。
18時 :サラダの下ごしらえ、ドレッシングの用意。生ハムを大皿に並べ、ラップして冷蔵庫。
20時:友人着。アペリティフ用つまみを用意。豚肉を冷蔵庫から出す。マッシュポテト用のジャガイモの皮をむき切り分ける。
20時半:アントレ。生ハムにコルニションを添え食卓に。ジャガイモをゆではじめる。
21時すぎ:マッシュポテトをつくる。豚肉を焼く。惣菜屋風ソーㇲ。
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Coup de main bienvenu
手順のメモをみると、21時すぎがドタバタしそうだ。こんなときは、旦那さんなり奥さんに、マッシュポテトなどをつくってもらうと、大いに助かる。電子レンジさえあれば、早めにマッシュポテトをつくっておいて温め直せばいいのだけれど。それはともかく、フランス人家庭に招かれると、旦那さん(奥さん)も、台所からココット鍋を運んできたり、パンを切ったり、食卓でサラダとドレッシングを混ぜ合わせたり、ワインの栓を抜いたりと大活躍している。こんな習慣があるから、料理する人もみんなといっしょに食卓を囲み、たのしい時間を過ごすことができるのだ。