
安価で良質なたんぱく源の卵をフランス人はどんなふうに調理するのだろう。
エッグスタンド用の殻つきの半熟卵 œuf à la coque は、白身は固まりだしているが黄身はほとんど生の状態だ。新鮮な卵がほしい(下のコラム参照)。熱湯に入れたとたんにヒビが入らないように、ゆでる30分前くらいに冷蔵庫から卵を出しておく。鍋に卵がかぶるくらいの水を注ぎ沸騰させる。卵を一つ一つスプーンにとり、静かに熱湯に入れる。再沸騰したら2分半から3分待つ。卵の大きさ次第で微妙にゆで時間が変わるのがむずかしいところだ。食パンをトーストし、バターをぬり、棒状に切り分け、ムイエットmouilletteを用意する。
3分たったら、網じゃくしで卵をとり出し、とがっている方を上にしてエッグカップに立てる。皿にのせ、スプーン、ムイエットを添える。スプーンの背で殻の上部をたたいてヒビを入れ、一気に切りとる。塩、コショウ少々を振り、ムイエットをとろとろの黄身にひたして味わう。すばらしい朝のはじまり!
半熟卵 œuf molletは、白身は火は通っているが、黄身はまだ半熟状のもので、再沸騰してから5分ほどでとり出す。すぐに冷水にとり、5分ほどおいてから殻をむくのだが、ヒビを入れてから水の中でむくときれいにできる。サラダに入れるのなら、固ゆで卵よりこの半熟卵の方がむいている。
固ゆで卵œuf durのゆで時間は再沸騰してから8分から10分で、ときどきフォークなどでかき混ぜながらゆでていくと、黄身が中心にすわる。ウフ・モレ同様に冷水にとって5分ほどおいてから殻をむく。この固ゆで卵を半分に切り分けてマヨネーズを添える一品は、ウフ・マヨœuf mayoと呼ばれ、定食屋でも一番人気のアントレだ。
目玉焼きœuf sur le platには、各人各様のつくり方があるけれど、ぼくのは、フライパンをごく弱火にかけ、油を敷き、熱くなったら卵を静かに落とす。黄身はまだ固まっていないが白身の縁が焦げかかってきたら皿にうつす。塩と、コショウ(あるいはパプリカ粉)を振りかける。白身をナイフで切っては黄身につけながら味わう。
スクランブルエッグ œuf brouillé には厚めの小鍋をつかう。その鍋に、4人分として卵8個を割り入れる。塩、コショウ少々を加え、泡立て器で混ぜ合わせる。卵には塩がよくきくのでひかえめに塩することが大切だ。柔らかめが好みなら牛乳大さじ2、3杯加える。鍋をごくごく弱火にかけ、鍋に接しているところに卵がくっかないように木のへらで絶えずかき混ぜながら3、4分もすると、卵が柔らかなポマード状になってくる。小さく切っておいたバターを大さじ3杯加えて混ぜ合わせ、火から下ろし、混ぜ合わせつつ余熱で仕上げる。ゆでたりいためたグリーンアスパラガスを添えたらぜいたく極まりないし、トリッフをおろし入れれば、ノエルのごちそうだ。

Comment bien choisir des œufs
たまごの選びかた
パック上や卵の殻に直接押されているコードや番号を確かめながら卵を選ぶ。最初にパックに明記されていることがほとんどの(まれに卵の殻の上)「DCR(賞味期限)」をチェックしたい。その日付けは、産卵日の翌日から28日目のもので、黄身を生や半生で味わうときは、産卵日から10日以内のものがのぞましい。
どんな状態で、どんなエサで育されてきたのかも、味や健康上から大切な基準だが、それには、ふつう卵の殻に押してあるフランス産を表す〈FR〉の前のコード番号を確かめることが大切だ。
〈0FR〉ならBIOで、エサの95%がオーガニックで昼間は野外で放し飼いされた鶏の卵。
〈1FR〉はEn pleine airといい、昼間は放し飼いだが、エサはオーガニックでない鶏の卵。
〈2FR〉は、鶏舎飼育で、太陽の光を浴びたことのない鶏の卵。
〈3FR〉は、ケージの中でぎゅうぎゅうづめで飼育された鶏の卵。
予算がゆるすなら、パックに「BIO」あるいは「En pleine air (屋外)」と表記してある〈0〉か〈1〉の卵を選びたい。フランスでは、卵の売り場で、ほとんどの人がパックを開け、卵一つ一つをまわして動くかどうかチェックする。殻が割れていればパックにくっついてしまって動かないという知恵だ。

Œuf mimosa
ミモザ風たまご
固ゆで卵にちょっと手をかけるとミモザ風という前菜になる。固ゆで卵を二つに切り分ける。黄身をスプーンでとり出し、きざんでボウルにとる。黄身のつなぎになるように控えめにマヨネーズを加え、静かに混ぜ合わせる。これを、皿に並べた卵の、黄身をとったあとの穴に盛り上げる。せん切りにしたレタスを敷いておくと、卵のすわりがよくなるだろう。好みでパセリやタラゴンのみじん切りを散らす。スモークサーモンの小片をのせれば、ごちそうだ。
