『えんとつ町のプペル De l’autre côté du ciel』
お笑いコンビ「キングコング」は知らなくても、そのコンビのひとり西野亮廣(にしのあきひろ)が作った絵本『えんとつ町のプペル』については聞いたことがあるかもしれない。日本でベストセラーとなり、映画化、ミュージカル化され、2019年には仏語版も出版され、それを機にエッフェル塔で絵画展が開かれた。その絵本がアニメ化されたものが今週フランスで公開となる。監督は廣田裕介。
映画の舞台は、煙突だらけの「えんとつ町」。空は煙で真っ黒で、住人は青空も星も見たことがない。主人公の少年ルビッチはその町の駆け出し煙突掃除夫だ。
えんとつ町は250年前につくられた。新しい町をつくるため、海の向こうの町から人々がやってきたのだ。海の向こうの町の経済学者は、腐る貨幣を作った。すべてのものが腐るのに金だけが腐らないことが、金を貯めようとして争いが起こる原因だと考えたのだ。持っていても腐るから人々はどんどん金を使い、町は繁栄したが、中央銀行がそれを弾圧したために人々は移住してきた。しかし彼らは新しい町に壁を巡らせ、煙突の煙で空を見えなくした。
主人公ルビッチには友達がいなかったが、ある日ゴミ男と出会い「プペル」と名付け、友達になった。彼との交流から星を見るための冒険が始まる…。
ディストピアのなかのおとぎ話。背景も登場人物の多くも日本や欧州が入り交じる。将来の話のようだが、主人公の父親ブルーノは風貌からして昭和(作者の西野氏は1980年生まれらしいが、その父親に「男は泣くな」などと2回も言わせている)。そんな混ぜこぜ感は、この映画の元となった絵本が、イラスト・着色・デザインなど33名のクリエイターによる分業体制制作された背景によるのかもしれない。音楽(主題歌はHyde)をふんだんに散りばめ、キャラクター多彩、幻想的な風景が描かれたこの映画で、子どもと楽しいひとときを過ごせるだろう。
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https://www.allocine.fr/seance/film-292926/pres-de-115756