Exposition “A la rencontre du petit prince”
「星の王子さま」は、6歳の時に描いた象を飲み込んだボアの絵が誰からも理解されなかったため、画家になることを諦めた飛行士のモノローグから始まっている。作者のアントワーヌ・サン=テグジュペリ(1900 – 44)、本当に画家になりたかったのかもしれない・・・装飾美術館で始まった「星の王子さまとの出会い」展を見てそう思った。この本は世界的なロングセラーだが、作者が挿絵も描くに至った過程はほとんど知られていない。
実は、アマチュア水彩画家である母の影響で、サン=テグジュペリは若い頃からデッサンと水彩を始めたのだった。彼はよく母に挿絵付きの手紙を送った。会場には母の水彩画も展示されている。
飛行士になってからも滞在地でノートに描き続けた。「星の王子さま」の挿絵のナイーブアートのような作風からは想像できない、カリカチュア的な人物画もある。絵を見ればある程度画家の性格がわかる。その意味で、勝手に思い込んでいたサン=テグジュペリの人物像が少し修正できた。
展示会場の前半は、写真と手紙でリヨンでの子ども時代と、飛行士としてのキャリアを伝えている。王子さまとの出会いの場を書くきっかけとなったサハラ砂漠での遭難の写真や、当時の新聞記事が並ぶ。
後半はいよいよ「星の王子さま」の本番。書籍化された水彩画の原本だけでなくそのヴァリエーションや、採用されなかった挿絵案とそれに伴う文章も出ている。これらの絵と文章が入っていたらどんな内容になっていただろう。「星の王子さま」の世界が何層にもなって広がっていく思いがする。
王子さまが愛した「バラ」のモデルとなった妻、コンスエロにも触れなければならない。最後の展示室にコンスエロ作の風景画と自画像が出てきて驚かされるが、彼女は画家で彫刻家だった。結婚前には美術学校で正規の美術教育を受けている。「星の王子さま」は、第2次世界大戦中に夫妻の亡命先の米国で書かれた。コンスエロは挿絵のことでサン=テグジュペリにアドバイスをしたかもしれないが、会場ではその可能性には触れられていない。(羽)
予約をおすすめします。6/26(日)まで。
Musée des arts décoratifs
Adresse : 107 rue de Rivoli , 75001 Paris , Franceアクセス : Palais-Royal
URL : https://madparis.fr/
月休、11h-18h(木-21h。土日-20h)