フランス料理がユネスコの無形文化遺産に登録されてから9年。リヨンに「国際ガストロノミー館 Cité internationale de la Gastronomie」がついにオープンした。登録を機に、国内の4都市に食文化施設を置くことを文化省と農業省が決定。フランス食の遺産・文化委員会がリヨン(食と健康)、トゥール(食の科学)、ディジョン(ワイン)、 パリ=ランジス(食芸術)を選んだのは2013年のこと。(2年遅れの)待望のオープンだ。
ガストロノミー館はリヨンのランドマークのひとつ「グラン・オテル・デュー」の一角にある。1180年代に建てられ、2007年まで病院として使われてきた場所だが、その立派さといったらまるで、ローヌ川を見下ろす宮殿だ。このような姿になったのは、パリのパンテオンの設計で有名なジャック=ジェルマン・スフロが改築した18世紀のこと。リヨンでも大きさで一、二を争うという建物(5万m2!)の一部、4000m2を占めるのがこのガストロノミー館だ。2010年からの大改装計画でローヌ川に面した側には、5つ星ホテルのインターコンチネンタル、1階にレストランや商店(それが批判の的だとか)、オフィスなどが入った。
展示ではやはり「食の都・リヨン」の部分が小規模ながらも興味深い。欧州の交通の要所としてリヨンは古くから様々な食材の往来があり、ルネサンス期には金融・商業都市として栄え富が集まった。裕福な家の料理人だったが経済恐慌で解雇されたり、自分で独立したりして町に店を開いた女性たちLesmères lyonnaisesの存在もリヨン料理を語るのに欠かせない。そのひとりメール・ブラジエから料理を学んだヴォキューズ氏、彼が提唱した「ヌーヴェル・キュイジーヌ」と、リヨンの食の系譜をたどることができる。