2006年12月から07年3月まで、パリのグランパレで「海底に沈んだエジプトの至宝」展が開催された。海洋考古学者、フランク・ゴディノが、エジプトのアレクサンドリア北東のアブキール湾の海底で発見した古代エジプトの遺跡展だった。日本にも、09年に「海のエジプト展」という題名で巡回した。
テーマは、この地で行われていたオシリスの儀式だ。エジプト神話の神の一人、オシリスはエジプトを統治していたが、弟のセトに殺され、バラバラにされてナイル河に捨てられた。妻で妹のイシスは死体を集めて魔術で蘇らせ、息子ホルスを産んだ。ホルスはセトを打ち負かし、父に代わってエジプトの主となり、オシリスは冥界の王になった。
前回の展覧会で紹介された、地盤沈下と地震のために8世紀に水没した伝説の都市ヘラクレイオンとカノープスは、その後の発掘で、毎年エジプト全土から祭司が集まって行ったオシリスの儀式の出発地と到達地だったことがわかった。19日間かけて、2体のオシリス人形をカノープスの神殿に運ぶ儀式が、出土品と共に順を追って紹介される。オシリス人形の一つは植物で出来ており、水をかけられて発芽していく。最終地点のカノープスで、オシリス人形は埋葬される。死と再生を象徴する儀式から、エジプト人にとって神はこれほど身近なものだったのかと驚かされる。(羽)
2016年 1月31日まで
アラブ世界研究所
1 rue des Fossés-Saint-Bernard,
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