ブルターニュを訪れると、一度はクレープ屋に入り、バターをたっぷり使って焼き上げられたクレープを味わう。まず塩味のクレープから始め、2枚目か3枚目に甘いもので終わるのが一般的。塩味クレープの生地はソバ粉が原料でgalette de sarrasin と呼ばれる。ソバ粉farine de sarrasinは大きめのスーパーで手に入る。
前日に生地の用意。ソバ粉はグルテンを含まないので、ふるいにかける必要はないが、小麦粉はふるいにかける。大きなボウルにソバ粉と小麦粉をとり、よく混ぜ合わせる。ここへ塩と、腰の強い落花生油を加えたら、泡立て器で勢いよく混ぜ合わせながら、水を3回くらいに分けて加えていけば、ダマのないなめらかな生地のでき上がり。ラップで覆って、少なくとも12時間は寝かせる。
クレープを焼き始めると大忙しなので、あらかじめ具を準備する。といっても「コンプレートcomplète」なら、卵とハムとおろしたエマンタールチーズemmental râpéだけなので簡単。ハム1枚を四つに切り分けるだけ。そしてバターをポマード状になるまで室温に置いておく。
なるべく底が広い、くっつかないように樹脂加工がしてあるフライパンを用意する。フライパンに刷毛でバターを塗り、中火にかける。フライパンがしっかり熱くなったら、生地をお玉1杯、フライパンの片側半分に流し入れ、フライパンを回すようにしながら生地を素早く広げる。生地の薄いところに小さな穴があくくらいがベスト。薄く広がらないときは、生地に水少々を加えて混ぜ合わせて、ゆるくする。
生地の端が焼けて軽くめくれ上がってきたら、バターを刷毛で全体に塗り(生地がまだこわれやすいので慎重に!)、真ん中に卵を落し入れる。黄身を指で軽く押さえるようにしながら、フォークで白身を広げる。黄身を囲むようにハム4切れを置き、おろしチーズをハムの上に振りかける。縁にしっかりと焼き色が着いてきたら、端を折り畳んで四角形ににする(イラスト参照)。フライパンを傾け、クレープを皿の上にすべり落とせば、ボナペチ!
飲み物は辛口のシードルcidre brut。(真)
生地(約12枚分):ソバ粉250g、小麦粉60g、落花生油大さじ2杯、粗塩小さじ半杯、水750cc
具(4枚分):卵4個、ハム4枚、おろしたエマンタルチーズ150g
●miroir ou brouillé
クレープ屋crêperieで、「コンプレート」を頼むと、お店の人は「œuf miroir ou brouillé」と聞いてくる。「œuf miroir」と答えれば、卵の黄身はそのまんま。「œuf brouillé」なら、スクランブルエッグ状に焼いてくれるのだが、ほとんどの人が「œuf miroir」を頼んでいる。流れ出る黄身が生地やハムに混じって、たまらないおいしさになるからだ。その黄身がプクンと半球状に盛り上がっていれば、卵が新鮮な証しです。そして卵が新鮮ということは、お店が繁盛していることで、信頼しても大丈夫。
●galette complète à l’andouille
「コンプレート」の別バージョンです。ハムのかわりに、豚肉製品のアンドゥイユが入る。それもブルターニュにあるゲムネ村名産の、切り口が渦を描いているandouille de Guémenéが本格的。豚の胃が主な材料だけに少々臭いが、ブルターニュならではの深みのある味になる。アンドゥイユは火を通さなくても食べることができるので、薄く切って出せば、アペリティフのよいお伴。
●塩味クレープいろいろ
クレープ屋のメニューには、さまざまな塩味クレープが並んでいる。卵だけからはじまり、ハムとチーズとか、タマネギとベーコン入りとか、ホウレンソウと生クリーム入りとか、スモークサーモンと生クリーム入りとか、山羊チーズとクルミ入りとか、選ぶのが大変。こんなメニューを参考にして、ボクらのクレープパーティもにぎやかにしたい。卵、おろしチーズ、ハム、アンドゥイユの他に、薄く切ったヤギチーズやロックフォールチーズ、スモークサーモン、軽く炒めておいたラルドン形のベーコン、クルミ、ハチミツ、ポマード状の生クリーム、レモン…。そして、薄くせん切りにしてからバター炒めして、生クリームを混ぜ入れ、塩、コショウしたタマネギ、やはり薄く切ってからバター炒めして、塩、コショウしたマッシュルームなども用意すれば、組み合わせ次第で、お好みのクレープが味わえる。かなりボリュームがあるので、せいぜい3枚くらいしか食べられないのがなんとも残念!