
年々夏の暑さがきびしくなってきている。火をつかって料理するのさえおっくうだが、きちんと食べて夏バテをはねとばすことにしよう。なるべく火をつかわず、さっぱりと軽く、脂っぽくなく、野菜中心の料理を考えてみた。
まず頭に浮かぶのが、スペインやポルトガル発祥の冷たいスープ、ガスパチョだろう。トマトや赤ピーマンでつくる夏野菜の香りがうれしいレシピは紹介ずみだ。市販のガスパチョもなかなかの味だが、オリーブ油を足したり、ミントやバジリコの葉を散らしたり、小さくさいの目に切った生ハムを浮かべたりと、ひと工夫すればさらに喜ばれるだろう。冷蔵庫で冷やして味わえば、暑さがすっとひいていく。フランス風冷製スープといえば、ジャガイモと長ネギが主な材料のヴィシソワーズ(コラム参照)。極上の生クリームが味の決め手になる。

サラダもいいが、グリーンサラダだけでは体がもたない。チーズやゆで卵、ハムや缶詰のツナなどもお供させてタンパク質をプラスさせたい。トマトとモッツァレラのサラダ、ニース風サラダやサヴォワ風サラダ、シーザーサラダ……。レバノン風タブレもおすすめだ。ブルグル(ひき割り小麦)が見えなくなるくらいにパセリやミントの葉がたっぷり入ってビタミン豊富だし、レモンのしぼり汁の酸みが食欲をそそってくれる。
太陽を浴びて育ったトマトやクルジェット、ナスや赤ピーマンのそれぞれのうまさがみごとに調和している煮込み料理がラタトゥイユ。夏の代名詞のような料理で、各家庭それぞれの作り方がある。野菜がくたくたになるまで煮たものもおいしいが、ぼくは 、クルジェットとナスは別々にいためてから加えることにしている。熱々に卵を落としたり、フライパンで焼いた肉や魚の付け合わせにしたり、冷ましてからレモンをしぼりかけてサラダにしたりと大活躍するので、多めにつくることにしよう。
旬のクルジェットをつかってキッシュを焼くのもおすすめだ(コラム参照)。チェリートマト適量も加えるといい。グリーンサラダをたっぷり添えれば一食になる。少し冷ましてから味わいます。
夏になるとよくつくるのが白ワイン風味のサバのマリネ。冷蔵庫に入れておけば5、6日は持つので多めにつくりたい。リゼットとよばれる小サバがあったら一番なのだが、大きめのサバしかなかったら、半分に切り分けることにしよう。頭を切り落とし、ハラワタを出して水洗いし、キッチンペーパーで水気をぬぐってから調理する。アントレにもいいし、メインにするならポテトサラダを添える。
料理のレパートリーをこれだけ広げれば、暑い夏もこわくな〜い!(真)
Crème vichyssoise

ジャガイモ400gの皮をむき、さいの目に切る。長ネギ(ポワローネギ)の白いところ250gをせん切りにして中鍋にとり、バターで5分ほどいためる。ジャガイモを入れ、自家製のチキンのブイヨン1リットル(なかったら1リットルの水+ブイヨンキューブ1個)を注ぎ、中弱火で25分から30分煮る。火から下ろし、ハンドミキサーでなめらかなクリーム状にする。乳脂肪30%の液状生クリームを混ぜ入れ、塩、コショウ(できたら白コショウ)で味を調える。冷めたら鍋ごと冷蔵庫に入れて1時間待つ。各人のスープ皿にとり分け、みじんに切ったシブレットを散らす。柔らかな風味の冷製スープにみんな舌つづみ。
Quiche aux courgettes

パイ生地pâte briséeは自家製が一番だが、時間がなかったら市販のものをつかってもかまわない。
クルジェットは小さめで身がしまっているものを600g買ってくる。洗ってから、皮つきのまま5ミリの厚さに輪切りにし、せん切りにしたエシャロット5個といっしょに軽く色がつくまでバターでいためる。次はキッシュの種を用意する。
ボウルに卵4個を割り入れ、液状生クリーム300ccを加え、泡立て器で混ぜ合せる。塩、コショウ。ナツメグ少々もおろし入れる。このへんでオーブンの目盛りを180度に合わせて点火する。
直径28センチの型にバターをぬる。3ミリの厚さにのばしたパイ生地を型におさめ、底をフォークでまんべんなくつっつく。クルジェットとエシャロットを全体に広げるように入れ、チェリートマトを一つかみ散らし、キッシュの種をしずかに注ぎ、熱くなっているオーブンへ。最初は下段に入れて10分、それから中段で20分、合わせて30分ほどで表面にきれいな焼き色がついたらでき上がり。オーブンから出し、少し冷ましてから味わう。
