アングレームへ。
パリから南西方向へ450キロ。週末旅行で楽しめるシャラント県のアングレームは、1974年からスタートした世界に誇る国際バンド・デシネ(仏語圏の漫画)フェスティバルで広く知られる。毎年1月末に開催され、期間中は人口4万2千人の小都市に、6千人のプロと20万人の漫画ファンが集う。その漫画文化への貢献が評価され、2019年にはユネスコから文化的価値の高い「創造都市」に選定された。
だが、アングレームはそれ以外の時期でも十分散策しがいがある。今回はいつ訪れても楽しめるアングレームの魅力の一部をご紹介したい。2回連載の第一回目、まずはよその大聖堂とは違った、ゴージャスな宝物館へ。
️サン・ピエール大聖堂
Cathédrale Saint-Pierre
フランスの大聖堂はゴシック様式が多いが、アングレームご自慢の大聖堂は12世紀に建立されたロマネスク様式だ。しかも、当時フランス南西部で広まった「façade-écranファサード・エクラン」と呼ばれる平面的なスタイルに特徴があり、正面部には装飾が細かく施されている。「中世の漫画みたいでしょう?」とはガイドさんの弁。たしかに目の前に立つと、白い壁面をキャンバスにした、立体的な迫力のあるバンド・デシネに見えてくる。まるで後世にこの町で世界的な漫画のお祭りが生まれることを予言していたようではないか。
そんな外観だけでも鑑賞する価値があるが、内部も圧巻。パリ在住者なら、丸いカラフルなガラスが眩いパレ・ロワイヤル駅の地下鉄入り口を知っているだろう。文化省はこの作品を手がけたジャン=ミシェル・オトニエルに、本大聖堂宝物館の展示空間作りを依頼。だからサン・ピエール大聖堂は、フランス唯一の現代アーティストが手がけた宝物館を有する大聖堂となっている。
ブルーとゴールドを基調とした鮮やかな空間の中にいると、「宗教施設というより現代アートの美術館では」と思えるほど。聖遺物箱、典礼衣装、彫像、聖体顕示台。約150以上の宝物の周りには、オトニエルが愛する伊ベネチアはムラーノ島の吹きガラスが散りばめらた。中には展示物の影の形まで緻密に計算された宝もある。注ぎ込む青いステンドグラスの光とともに、世紀を超えた神聖な宝物群を堪能されたい。大聖堂は無料で入場できるが、宝飾館の入場はガイド付きツアーでのみ鑑賞が可能だ。訪問前に忘れずに予約を。
▶️Cathédrale Saint-Pierre
1 place Saint-Pierre
16000 Angoulême
・大聖堂の宝物館入場の予約:こちらから。
・大聖堂裏のアングレーム美術館ホールでもチケット購入が可能。
入場料:8€/6€/18未満無料、18-25歳のEU在住者・非欧州国籍でも18-25歳の欧州在住者なら無料。
▶️アングレーム観光情報はこちら:
www.infiniment-charentes.com/tresor-de-cathedrale-angouleme/
️紙の博物館
Musée du papier
シャラント川が街中を走るアングレームでは、16世紀頃から製紙産業が始まったとされる。19世紀中頃には、ペルピニャンの元パン職人ジャン・バルドゥが巻きタバコの紙の生産を始めたが、その後、1885年に彼の弟の息子であるウジェーヌ・バルドゥが、アングレームに製造工場を創設。ここで象のマークでおなじみの「Le Nil」のタバコの紙や、筆記用の紙が大量に生産され、製紙業が大発展。20世紀には世界に名だたるタバコの巻紙の首都となり、全盛期には900人を雇用していたが、時代は変わり、1972年に閉業へ。
その跡地を市が買取り、1988年に製紙産業の歴史と文化を継承する博物館としてオープン。館内では古い水車が、往時を偲ばせる。工場は古き良き時代の空気もそのままに残され、貴重な製造道具や歴史的資料を展示する。巻きタバコのパッケージやチーズの空き箱は、今見てもデザイン的に優れたものだ。漫画が紙に描かれることを思うと、やはり紙の生産拠点であったこの町で漫画のお祭りが生まれるのは宿命的だと感じる。
▶️Musée du papier
134 rue de Bordeaux 16000 Angoulême
10月〜5月:火〜金 13h45 – 18h、土・日14h – 17h30
6月〜9月:火〜金 13h45 – 18h、土・日14h – 18h
常設展示の入場料:3€/2€/18歳未満無料
www.angouleme.fr/mes-loisirs/ville-culturelle/les-musees/musee-du-papier
★「アングレーム小旅行」は2回にわたって掲載します。
次回は、バンド・デシネ(BD)のメッカ、アングレームの、国際バンド・デシネ・フェスティバルなどを訪れます。
●パリからの行き方:
パリ・モンパルナス駅からTGVで約2時間
●アングレーム観光局:
1 place de l’Hôtel de Ville – 16000 Angoulême
Tél : 05.4595.1684
www.angouleme-tourisme.com
●ホテル
中心地でアクセスが便利。修道院を改装したデザインホテル。
Hôtel du Palais:
4 place Francis Louvel – 16000 Angoulême
Tél : 05.4592.5411 www.hotel-angouleme.fr
部屋は一泊80€くらいから。
●レストラン
ミシュラン星付きレストランで修行をしたブリスさんによる、モダンなビストロ料理。オープンカウンター、内装もすてきな店。
Le Comptoir de Brice:
50 rue de Genève – 16000 Angoulême
Tél : 06.6182.9161 www.lecomptoirdebrice.com
月日休。火〜土 12h–14h / 19h30–22h
前菜8€、主菜19€、デザート8€。
シェフのブリスさんも出演!レストラン紹介ビデオ☟
Cathédrale Saint-Pierre
Adresse : 1 place Saint-Pierre , 16000 Angoulême , Franceアクセス : SNCF Angouleme駅