元祖・計算機!「パスカリーヌ」。
パスカリーヌは、パスカルが19歳から3年かけて開発し、1645年に完成させた真鍮と黒檀製の機械式計算機。
歯車の動きで足し算の繰り上がりと引き算の繰り下がりが自動的にできる。機械によって5桁から10桁の計算が可能。クレルモンのアンリ・ルコック博物館の人が実物と同じに作られた複製品で実演してくれた。
足し算は、ダイヤルの数字の場所にペン状の棒を差し入れて回して2つの数を入力するとカチッと音がして繰り上がり、計算結果が上部の小窓に手書き数字で表れる。引き算は小窓を引き算モードに変えてから、ダイヤルの内側の数字(9の補数)を回す。
パスカルは50台の試作品を製作したが、完成品は20台で、現存するのは同博物館の2台、パリの工芸博物館(Musée des Arts et Métiers)の3台、外国に3台の計8台のみ。
パスカルはコピー品が出回るのを恐れて、ルイ14世に王の特許状を求め1649年に許可された。100リーブルと非常に高価だったため、目指していた商品化は不成功に終わった。
パスカリーヌの原理は、掛け算、割り算もできるライプニッツの計算機に引き継がれ、19世紀に仏人シャルル・トマがこれを改良して商品化に成功。その後、電気モーターを使った計算機、トランジスタ計算機へと発展し、大規模集積回路の開発につながったのだそうだ。
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【特集:ブレーズ・パスカル生誕400周年 クレルモンへパスカルを訪ねて。】
5回にわたって掲載します。
〈その1〉パスカルの精神的故郷、クレルモン。記念イヤーイベント。
〈その2〉〜人間は考える葦である〜『パンセ』とは?
〈その3〉パスカルの発明:元祖・計算機「パスカリーヌ」と、公共交通。
〈その4〉パスカルの大気圧実験、ジョード広場とピュイドドームの山頂で。
〈その5〉パスカルとジャンセニンスム
パリのポール・ロワイヤル図書館をたずねて
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「パスカルの三角形」
最上段すべてに1を、最も左の列にも1を配置し、それ以外の位置には上と左の数の和を配置する。この三角形にはさまざまな数学のルールが秘められている。写真は、幾何学のいくつかの発見を収めた手紙を含む、1659年のGuillaume Desprez刊の書物より。
パスカルは公共交通の始祖だった。
パスカルの5ソル馬車
パリの決まった停留所に決まった時間に通過する8人乗り馬車を5ソル*で庶民に利用してもらおうと、パスカルは友人のロアネーズ公爵とともに1662年に会社を設立。5路線開いたが、会社はその後人手に渡り、1678年に廃業。パリに乗合馬車が復活するのは1828年。
*当時の通貨単位。1リーブル=20ソル (スー)