日本の岨手由貴子監督の『あの子は貴族』が今月30日、フランスで劇場公開となる。初の長編作品『グッド・ストライプス』で、新藤兼人賞金賞を受賞した若手監督の作品だ。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」でヒロインを演じた門脇麦、女優・モデルの水原希子を主人公に迎え、東京を舞台に若い女性が手探りで生きる道を探す姿を描いている。
華子は27歳。裕福な家のお嬢さまで渋谷の松濤の実家に暮らしている。お出かけはタクシー、女友だちとはホテルのラウンジでアフタヌーンティーをしながら、結婚や家庭、出産、仕事について話しあう。仲良しグループのなかで結婚していないのは華子と、逸子くらいになった。本人も家族もこのままでは婚期を逃す、と気をもんでいる。
華子が恋人を家族に紹介するというので、ある晩家族が高級和食店に集まるが、華子は一人きりで現れた。彼とは別れたばかりだという。ならばお見合いだ、と、即座に計画を立て始める親と叔母、年の離れた姉。「まだお見合いなんて存在するの?」と若い甥っ子、「華子の意見を尊重すべき」というバツイチの姉。世代間で意見がぶつかり合うが、華子は見合いにのぞむ。
もう一人のヒロインは富山から上京した美紀。猛勉強の末名門大学に入学したものの、学費のため、田舎の家族のためにキャバクラ嬢の仕事で金を稼いでいたが両立できず、学業を断念していた。
そんなふたりが東京で出会う。理想の男性と出会い結婚を前に幸せ絶頂にある華子だが、そんな時、今まで自分が生きていた社会とは別の世界に目を開くことになる。
東京と地方、格差、東京のハイソな世界の内側にも存在するさらなる階層。「家」を継続させることが最優先の結婚、東京のど真ん中で温存される〈家〉の因習と女性の役割 。岨手監督は1983年生まれ。この映画を、日本の若者はどう見るのだろう。気になるところだ。