Boudin blanc aux pommes
万聖節の休暇にル・アーヴルへ。ミュージシャンの友人宅に招かれたのだが、ル・アーヴル特産というブダン・ブランが出てきた。「メインだと一本では物足りないので、アントレです」。軽く焼き色がついたブダンの下には、シナモンの香りがするリンゴの輪切りが敷いてある。ブダンは日本のはんぺんのように柔らかな歯ざわり、ミルクの香りが口の中に広がる。「豚肉とか子羊肉とかの肉なしで、中身は、卵、ミルク、小麦粉…」。甘酸っぱいリンゴが、その繊細な味わいを引き立てている。
家に帰って、さっそく試してみることにしたのだが、どこの肉屋にもル・アーヴル産ブダン・ブランは置いてない。鶏肉入りというブダン・ブランを買ってきた。これをリンゴとにいっしょにオーブンで焼くのだが、リンゴは甘みと酸味のバランスがいいマリアンヌにした。リンゴは皮をむいて二つに切り分け、7ミリくらいの薄切りにする。種のところは切りとる。これをオーブン皿の下に敷き、砂糖少々とシナモンパウダーを振りかけ、バターの小さなかたまりを散らす。リンゴの蒸留酒カルヴァドス少々も振りかければ文句なしだ。
オーブンの目盛りを180度に合わせて点火。
ブダンは、ところどころペティナイフの先で軽く突っついてから、リンゴの上にのせ、やはりバターのかたまりをおく。熱くなっているオーブンに入れ、20分待つ、というだけの簡単にできるごちそうです。オーブンがないなら、同じように下準備したリンゴをフライパンで焼き色がつくまで焼き、ブダンも弱めの火で軽く色がつくまで焼けばいい。
マスタードだけでもいいが、マスタードソースを添えてもいいだろう。エシャロット適量をみじん切りにし、バターで炒めて透き通ってきたら、ここはノルマンディー風にシードルを注ぐ。それが半分くらいになるまで煮詰めたら、液状生クリームと好みの量のマスタードを加え、塩とコショウで味を調えればソースもでき上がり。(真)
4人分:ブダン・ブラン4本、リンゴ3、4個、砂糖少々、シナモンパウダー少々、バター
ソース:エシャロット2個、シードルカップ1杯、液状生クリーム150cc、マスタード、バター、塩、コショウ
Boudin blanc
ブダン・ノワールは豚の血と脂から作られるが、ブダン・ブランは、ル・アーヴル産は別として、ふつう鶏肉、子牛肉、豚肉、ウサギ肉のような白っぽい肉のすり身に、生クリームや牛乳、卵、小麦粉、さまざまなスパイスを混ぜ入れたもの。臓物に属するブダン・ノワールに比べるとどこまでもまろやかな味わいで、オーブンやフライパンで焼くことになっている。アルザスではシュークルートにも入る。ノエルの食卓に登場することが多いから、ノエルが近づくと、肉屋にトリュフ入りの高級品なども並ぶことになる。
Pomme Ariane
数えきれない品種がある果物はリンゴ。ゴールデン・デリシャス(米国)、ピンクレディー(オーストラリア)、 ガラ(ニュージーランド)、ジョナゴールド(米国)、フジ(日本)など国籍さまざまなリンゴが八百屋に並ぶ。フランスを代表するリンゴといえばレネットだが、新顔は1979年登場のアリアンヌ。同年に仏領ギアナから打ち上げられた人工衛星ロケット、アリアンヌ1号にちなんでの命名だ。INRA(国立農学研究所 )が交配に交配を重ねて開発した小さめのリンゴで、噛みごこちよく、酸味と甘みのバランスも抜群だ。
Boudin blanc aux châtaignes
クリは「châtaignes entières pelées」という、すでに渋皮もむいてある瓶詰入りなどを使うと便利。フライパンにバターを少し多めにとり、みじんに切ったエシャロット1個とクリ400グラムを加え、砂糖少々も振りかけて炒め、塩、コショウし、とり出す。フライパンを洗ってバター少々をとり、ブダン4本を弱めの火で20分、軽く色がつくまで焼く。そこへ白ワイン半カップ、液状生クリーム250cc、マスタード少々を加えて少々煮詰め、ブダンの脇にクリを入れてクリームを絡め、クリが熱くなったらでき上がり。ノエルにどうぞ。