Henri Cartier-Bresson “Le Grand Jeu”
カルティエ=ブレッソンは1973年に自作から最良とみなす385点を選び、「マスター・コレクション」としてまとめた。この展覧会では、5人のコミッショナーに「マスター・コレクション」の中から好きな作品を50点ほど選んでもらい、展示方法も各人に任せた。5人とは、自分のコレクションを展示する現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」を5月にオープンした実業家のフランソワ・ピノー、学芸員で国立図書館写真版画部長のシルヴィー・オブナ、スペイン人作家ハヴィエ・セルカス、映画監督のヴィム・ヴェンダース、写真家のアニー・リーボヴィッツで、各人に1展示室を割り当てた。
5人の中でも、作品を見るヴェンダースの「目」が圧倒的に素晴らしく、彼のコーナーだけ見て帰れば良いと言っても過言ではないほどだ。展示室の一角で、カルティエ=ブレッソンの写真を選ぶ自分を自撮りした短編映画を上映している。その中で、ヴェンダースは自分にとって作品がどう見えるかを率直に話していく。
「人物の多くが後ろ姿を見せている。ドイツロマン主義の画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵のようだ」。言われてみれば確かにそうだ。ベールを被り両手を前に出して立っている女性を撮った写真では、写真家が被写体と一体化している、つなぎを着た男性が子供を抱いた妻らしき女性の方を向いている写真では、後ろを向いていて顔が見えないが、男性の家族を思う気持ちが伝わってくると言う。敗戦が決まったドイツのデッサウで下を向いて歩く少年の写真を見て、「上を向く日が来るのだろうか」と少年の将来を心配する。
芸術作品を見るときは主観的であっていい。解説に惑わされず、自分の目で見ることの大切さをヴェンダースは教えてくれる。(羽)
国立図書館 BnF Francois Mitterand - Galerie 2
Adresse : Quai François Mauriac , 75013URL : https://www.bnf.fr/fr/agenda/henri-cartier-bresson
火―土、10 :00-19 :00 、予約要、9ユーロ。