Poulet pané en marinade
『La Cuillère d’argent』というぶ厚いイタリア料理のレシピ本をめくっていたら、はてな? という鶏肉料理があった。鶏の胸肉をフライにしてからマリナードに漬け、冷たくして食べるというのだ。イタリアの、暑い夏向けの料理かもしれないが、夏を待ちきれずさっそく挑戦してみた。
鶏の胸肉を4枚、パン粉をまぶしてフライにするのだが、まず、すりこぎなどで軽くたたいてやや平たくする。強くたたくと身がつぶれるので気をつけよう。卵を大きめのボウルに割り入れてよくほぐし、塩を二つまみ混ぜ入れ、小麦粉をまぶさずに鶏肉を15分漬け込む。小麦粉をつけないのは、揚げた鶏肉がマリナードに漬けている間にペチャッとしてしまうのをふせぐためかもしれない。大きな皿にパン粉をたっぷりとり、鶏肉を一枚一枚入れて、手でおさえるようにしながら、パン粉を鶏肉の両面にしっかりと付ける。
次はマリナード作り。玉ネギはごく薄く切る。セロリと赤ピーマンはせん切り、ニンジンは薄く輪切り、ニンニクはみじん切りにする。鍋にオリーブ油をたっぷりとり、野菜を入れ、5分ほど弱火で炒め、塩、コショウし、ビネガーと白ワイン、砂糖少々を加える。ビネガーは赤いワインビネガーではなく、白ワインのビネガーかシードルのビネガーだ。沸騰したら火からおろし、ニンニクとセージの葉(なかったらタイムでもいい)を入れる。ぼくはエスプレット産の唐辛子粉少々も加えた。
大きなフライパンに油とバターを半々に、フライパンの表面全体をおおうだけ加える(オリーブ油大さじ3杯+バター30gくらい)。中火にかけて熱くなったら、鶏肉を重ならないように入れる。何度かひっくり返しながら、10分ほど焼いていく。きれいな焼き色がついたらとり出し、バットなどに並べ、すかさず、まだ熱いマリナードを野菜ごと平均にかける。「冷めてから冷蔵庫に入れ、少なくとも4時間待つ」。さて味の方は? うまい!今の季節なら、揚げたてを、野菜も熱々のままどうぞ。ワインは、アルザスの辛口すぎない白。(真)
4人分:鶏の胸肉blanc de poulet 4枚、玉ネギ1個、ニンジン1本、セロリ1茎、赤ピーマン半個、ニンニク2片、卵は胸肉の大きさ次第で1、2個、ビネガー350cc、白ワイン100cc、砂糖小さじ1杯、オリーブ油、バター30g、セージの葉5、6枚、塩、コショウ
Blanc de poulet
鶏の胸肉はチーズとハムをはさんでフライにしたり(コルドン・ブルー)、セージなどのハーブとホイルに包んでオーブン焼きにしたり、中華風にアーモンドと炒め合わせたりなど、オヴニーのレシピ欄にも何度か登場している便利な食材だ。スーパーでラベル・ルージュや有機栽培の飼料だけで育てられたBIOの胸肉も簡単に手に入る。脂肪分が少ないので、火を通しすぎるとぱさぱさしがちなので気をつけたい。胸肉に接するささみaiguilletteはさらに脂肪分が少なくダイエット向き。
Sauge
主に南仏料理やイタリア料理に使われるセージは、独特の強い香りを持ち、豚肉、子牛肉、鶏肉の料理に向いているハーブ。ソーセージの詰めものにも入り、野菜のスープにもアクセントをつける。葉を煎じて飲むと、消化を助け、のどの痛みを和らげてくれるという。セージをひと鉢買ってこよう。寒さにも強く育てやすく、庭の日当たりのいいところに植え替えるか、鉢植えのまま、日当たりのいいバルコニーや窓際に置く。水をやりすぎないことが大切だ。春に咲く青い花も美しい。
La Cuillère d’argent
重さ3キロ、1500ページにレシピ2000。「イタリア料理のバイブル」と称えられてきたのが納得できる一冊だ。内容も家庭料理に根ざしているだけに作りやすいものが多く、今晩何を作ろうかな、とアイデア不足のときに大いに役に立つ。ニョッキ、パスタ、リゾット(アスパラガス入り!)など、何度となく世話になっている。野菜のレシピも豊富で、たとえばナス料理だけでもパルミジャーナなど15種類。そしてイタリア人が得意の子牛肉料理もおなじみのオッソ・ブーコをはじめ約60種類と圧巻!バラエティーに富んだデザートにも脱帽。イタリア料理勢ぞろいです。(真)