【特集:パスカル生誕400周年。】は、5回にわたって掲載します。
〈その1〉パスカルの精神的故郷、クレルモン。記念イヤーイベント。
〈その2〉〜人間は考える葦である〜『パンセ』とは?
〈その3〉パスカルの発明:元祖・計算機「パスカリーヌ」と、公共交通。
〈その4〉パスカルの大気圧実験、ジョード広場とピュイドドームの山頂で。
〈その5〉パスカルとジャンセニンスム
パリのポール・ロワイヤル図書館をたずねて。
〜 人間は考える葦である 〜 『パンセ』とは?
パスカルの 『パンセ』(「思考/考察」の意)は「人間は考える葦である」(人間は葦のように弱い存在だが、思考するという長所がある、というような意味)の言葉で日本でも有名だ。
この作品は1658~62年にバラバラの紙片に書かれたパスカルの遺稿を整理して出版されたもの。パスカルの遺稿や出版物を相続した姉ジルベルトと夫のペリエが、写しを2人の人に依頼し、原本は帳面に張り付けて保存し(約500頁)、出版に備えた。息子のエティエンヌがジャンセニストのアルノーとピエール・ニコルに依頼してまとめられたのが最初の出版『宗教と他のテーマについてのパスカル氏のパンセ』(1670年)。これはポール・ロワイヤル版と言われ、論争を呼びそうな遺稿は収録されず、文の改変もされたが出版物としては大成功。手稿に忠実な本にすべきという哲学者ヴィクトル・クザンの訴えにより、より多くの遺稿を含めた版が1844年に出版された。
テーマ毎に遺稿をまとめたレオン・ブランシュヴィックによる20世紀初めの『全集』がスタンダード版になったものの、その後も、パスカルが作りかけていた目次や、パスカルの思想の変化を考慮した様々な版が1970年代まで出版されている。今年も新たな『全集』が出版されており、パンセ研究は今も続いているのだ。
神と人間の関係、信仰、正義と理性、哲学、道徳、キリスト教などについての長短の考察は示唆に富んでいる。「いつも新たな発見があるし、いろんな時代に合う」とポール・ロワイヤル図書館の司書は言ったが、気が向いた部分を読んでそれについて考えてみるというのが一つの読み方かもしれない。「哲学をばかにすることが、真に哲学すること」という、既成の概念や学説、通説にとらわれずに自分の頭で考えることを推奨するパスカルの言葉にも合っているのでは?
地元クレルモンにはパスカルのファンがいた!
パスカルの書斎を再現したアーチスト
オーヴェルニュ関連書籍専門書店の2階に、パスカルの書斎を再現したのはアーティストのミス・ボルさん。ボルさんはパスカル関係の品を収集し、17世紀の家具調度について調べて収集し、足りないものは自分で製作した。初版本ほか幾何学の道具、様々なオブジェ200点が小さな部屋に詰まっている。
Le Curieux Bureau de Blaise Pascal :
(ブレーズ・パスカルの興味深い書斎)12/31迄
Librairie Nos Racines d’Auvergne
5 place de la Victoire (大聖堂や観光局のある広場です)。