ジャズ・エイジ、狂乱の時代とよばれた1920年代の伝説的カップル、ゼルダとスコット・フィッツジェラルド。スコットはゼルダに小説の主人公たちの幻影を求め、彼女の奔放さと気紛れを愛した。二人と、ニューヨーク、パリ、そして南仏で交流し、彼らが栄光から破たんへの道をたどる様子を観察していたのが、後に世界的に有名となるアーネスト・ヘミングウェイだった。ルノー・メイエール作、演出のこの戯曲は、この3人の関係を描いている。
スコットの才能にほれている小説家希望のヘミングウェイ、ゼルダと自らの小説の構想にしか眼中にないスコット、そして男たちをとりこにすることに情熱を傾けるゼルダ。彼らが浴びるように飲むお酒…。舞台はニューヨークから南仏へと移り、ヘミングウェイが作家として頭角をみせ始め、逆にスコットは斜陽の一途、そしてゼルダの狂気がますますエスカレートしていくのが舞台から伝わってくる。「君は作家としてまだ終っていないが、まずはゼルダと別れることだ」と言い放つヘミングウェイ。これからのし上がっていこうとする男のあつかましいまでの自信と、溺愛(できあい)する妻をあくまでもかばおうとする男の優しさと弱さが見事に対比される。
スコット役のジュリアン・ボワスリエが実にいい。陰では夫に多くの助言をしていた、というゼルダの秘められた聡明さをサラ・ジロドーは見事に体現する。ヘミングウェイ役のジャン=ポール・ボルドも手堅い演技で好感が持てた。ヘミングウェイは『移動祝祭日』の中で、スコットへの崇拝ぶりや哀れみ、ゼルダへの厳しい批評眼を見せている。(海)
Théâtre La Bruyère : 5 rue La Bruyère 9e
01.4874.7699 M° Saint-Georges
火-土21h /土マチネ15h。22€-38€。
www.theatrelabruyere.com