ジョルジュ・サンドの食卓から 2

 ジョルジュ・サンドは約45年にわたる作家生活の中、100作に及ぶ作品を残している。その初期、「感傷的ロマン主義」といわれる時代を代表するのが『モープラ』(1837年)だ。野蛮な盗賊モープラ一家に生まれた少年の成長を追うこの物語は、ミステリー小説のようでもあり、フランス革命前夜を描く歴史小説でもあり、教育の大切を説く社会派小説でもあり、はたまた理想のカップル像を描く恋愛小説でもあり、楽しみ方は読者それぞれの感受性にゆだねられている。
 全体を通して印象的なのは、アルコールが登場する回数の、なんと多いこと! ひと昔前、フランス人はワインを水がわりに飲む、などと言われていたけれど、この小説の舞台になっている18世紀フランスの田舎では、まさにそれがあてはまるよう。特にこのモープラ一家は、何かとワインや蒸留酒を飲んでは、飲ませる。退屈な日常や難しい問題を忘れるために、時には空腹を紛らわせるために。そして、農民や司法関係者をだましたり、女性をしゃべらせるために……。 
 主人公のベルナールは、盗賊一家から離れて愛する従妹エドメの家で暮すようになったその夜、「僕に必要なのは、(寝床のための)一束の麦わら、そして1杯のワインだけ」と言い放つ。ちなみに、この時ベルナールは17歳。そして、それまでの粗野な世界から少しずつ抜け出していくきっかけをつくったのも、やはりワイン。教育係となった神父に自らのあまりの教養のなさをさらけだすことになって気まずい思いをしているベルナールに、従妹の父は「さあ、食事にしよう。お腹は減っているか? 良いワインは好きか?」と声をかける。「ラテン語よりは、ずっと」と答えたベルナールは、そこから新しい保護者たちに少しずつ心を開き、暗黒の世界から抜け出ていくのだ。(さ)

 

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