Zuppa di aglio fresco
パトリシア・コーンウェル作〈ケイ・スカーペッタ検屍局長シリーズ〉に出てくる料理のレシピを集めた一冊(下欄参照)を紹介したことがある。退院してきた姪のルーシーをベッドに寝かせてから、「私はズッパ・ディ・アーリョ・フレスコを作って火にかけた。(イタリアの)ブリジゲッラの丘陵地帯で好まれているニンニクのスープで、昔から赤ん坊や年寄りの滋養食とされている。(…)居間の暖炉にあかあかと火が燃え、おいしそうなにおいがあたりに漂い始めると、気分が明るくなってきた。長い間料理をせずにいると、(…)家が悲しんでいるような気がするのだ。」(『死体農場』相原真理子訳 講談社文庫)
鍋にオリーブ油を大さじ2杯とり、押しつぶしたニンニク10片と小口切りにしたニンジンを加える。中火で焦がさないように3分ほど炒め、ニンジンが柔らかそうになったらトリガラのスープを注ぎ、ローリエとタイムを加える。沸騰したら火を弱火に落とし、ふたをして30分ほど煮ていく。
ローリエとタイムを取り出し、全体がなめらかになるまでミキサーにかける。ここで辛口のシェリー酒やベルモット風味の酒などをグラスで半杯注ぎたい。
ボールに卵の黄身3個をとって丁寧にほぐす。ここへオリーブ油大さじ2杯とおろしたパルメザンチーズ(贅沢でも本物を使いたい)を加え、泡立て器を使って混ぜ合わせ、さらにスープを大さじ4杯ほど混ぜ入れる。これを一気にスープに混ぜ入れ、絶えずかき混ぜながら中火で温めていけばとろりとした感じになってくる。黄身が固まらないように沸騰直前で火から下ろす。刻んだパセリをたっぷり散らし、必要なら、塩、コショウで味を調える。
スープ皿に田舎パン一切れを敷き、熱々のスープをその上から注ぎましょう。
イタリアの田舎の、簡便でいながら、ニンニクやパルメザン、シェリー酒の風味が一つになった味に、体が芯からあたたまってくるようだ。(真)
ニンジン3、4本、ニンニク10片、卵の黄身3個、おろしたパルメザンチーズ60g、トリガラのスープ1リットル、パセリ、オリーブ油、塩、コショウ
●Patricia Cornwell “Crimes et délices”
ケイ・スカーペッタ検屍局長のレシピや、食いしん坊のマリーノ警部と通うレストランの一品、そして料理好きな著者の得意料理が集められている。ケイはイタリア系だけに、おいしそうなイタリア料理が多い。
●funghi e carciofi
スカーペッタの宿敵だった殺人鬼テンプル・ゴールトが大好きだったというフンギ・エ・カルチョッフィ(マッシュルームとアルティショーの唐揚げ)の作り方も出ているので紹介。
マッシュルームは根元を切り落としてから洗い、水気をよくぬぐっておく。大きかったら二つに切り分ける。アルティショーcマur d’artichautsは四つに切り分ける。缶詰を使うときは油がはねないように、クッキングペーパーなどを使って徹底的に水気を吸いとっておくことが大切だ。
フライパンなどに300ccほどオリーブ油をとって火にかける。ニンニク5、6片を押しつぶして入れて香りをつける。190度くらいまで熱くする。苦みが出てはいけないので、ニンニクは軽く色がついたという段階で取り出してしまう。マッシュルームとアルティショーは、何回かに分けて揚げること。きれいな色がついたらクッキングペーパーの上にでものせて油気を切り、ボールにとる。
みじんに切ったバジリコをたっぷり加えて混ぜ合わせ、塩、コショウ。少し冷ましてからパルメザンチーズを振りかければ素敵なおつまみ。殺人鬼は高級なボルドーの白を飲んでいたが、シャルドネー種の白でもあれば上等。
ニンニクのつぶし方:
まな板の上にニンニクをのせ、その上に包丁の刃を横にしておき、上から手で押しつぶすのがいちばん簡単だ。ついでに皮までむけてしまう。
●ニンニク
ニンニクはアジア原産で、薬用として中近東、イタリアなどを経て、フランスに入った。現在は、フランス料理一般の味付けに欠かせず、特に南仏ではオリーブ油とコンビを組んで味の決め手。
以前は、初夏に収穫されて編み上げられたニンニクtresse d’ailを買って、涼しく風通しのいいところに吊して保存したものだが、最近は一年中出回っている。白あるいはやや灰色がかったail blancと小振りで紫色がかったail roseがある。皮にシミがなく、身がしっかり締まったものを選びたい。