昨年1月に公開された『L’Esquive(身をかわすこと)』、個人的には文句なく04年度のベスト1フランス映画だった。が、まさか仏映画アカデミー会員の投票で決まるセザール賞で作品・監督・脚本・新人女優と4つもメインの賞をゲットするとは! 驚いた。下馬評は、メインストリームの超大作『ロング・エンゲージメント』や850万人も観客動員してしまった『コーラス』に傾いていたから、これは快挙だ。製作費130万ユーロの小品(ちなみに『…エンゲージメント』の方は458万ユーロ)、舞台は「バンリュー(郊外)」のサンドニ市、出演者のほとんどが現地調達(?)の若者、と、しっかりマイナー作たる要素を満たしている。
高校生が授業の一環で、マリヴォー作『L’Esquive』の上演準備をしている。主演女優のリディア(サラ・フォレスティエ)に惚れてしまったクリモ(オスマン・エルカラ)は、相手役の座を横取りする。18世紀の作家、マリヴォーは、フランス伝統の「言葉の応酬による恋の駆け引き」で知られ、マリヴォダージュという言葉まで残した。このマリヴォダージュが芝居の中と若者たちの実生活の中を往来する。劇中劇では古典仏語、日常では「バンリュー」のスラング(半分位しか分かりません)が飛び交う可笑しさ。リディアにクリモを取られた元彼女の女友達グループVSクリモの仲間の男友達グループ、仲介役が騒ぎを大きくする…。この映画最大の魅力は活力! それはそのまま「バンリュー」に住む若者たちの活力だ。
これを見事にスクリーンに昇華させえた監督アブデラティフ・ケシシュは本物だ。セザール効果で再公開中。今のフランス社会と仏語の落差の妙が分からないと楽しめないから日本公開は無理かも。だからこの機会にぜひとも観て下さい! (吉)
●クレテイユ国際女性映画祭
27年にわたり女性監督作品にこだわり続けてきたクレテイユ市。ともすれば埋もれがちな女性によるもう一つの世界に、絶えず光を照らしてきた。今年も長編フィクション、ドキュメンタリー、短編のコンペを柱に、3月20日まで開催中だ。
オマージュ上映では、アメリカインディアンの血を引くアラニス・オボムサウィン監督や女優ジュリエット・ビノシュの代表作を紹介。また女性によるアニメ作品も多数上映。アジア作品の特集〈Focus on Asia〉では、日本から浜野佐知監督が参加。17日の21時から、「老人の性」というタブーを、繊細かつ壮快に描いた『百合祭』を上映。また「非宗教性」「アフガニスタン」など現代的なテーマをドキュメンタリー作品とともに考える〈Histoires de Voir〉も、映画祭が真骨頂を発揮する好企画。(瑞)
La Maison des Arts他2カ所 :
Place Salvador Allende 01.4980.3898
M。Creteil-Prefecture
www.filmsdefemmes.com/