Tourte a la viande
娘リリの大好物は英国風ミートパイで、彼女の誕生日のお決まりメニューだ。牛肉や子牛肉、トリ肉でもおいしくできるが、今回は子羊肉。モモ肉gigotを小さく切り分けたものを600グラム用意したい。
ココットのような厚鍋に油をとって熱くし、色がつくまで肉を炒める。強火。この上から小麦粉を大さじ2杯振りかけてよく混ぜ合わせる。白ワインをカップ1杯加え、さらに水を肉ひたひたになるまで注ぐ。木のヘらを使って鍋の底についているうま味を溶け込ませ、塩、コショウ、セロリの茎も加えたブーケガルニ、丁字2本を刺したタマネギ1個を加え、沸騰したら弱火に落とし、ふたをして1時間ほど煮込んでいく。
マッシュルームは、洗ってから二つあるいは四つに切り、フライパンに油を少々とって5分ほど炒めておく。卵4個は固ゆでにして殻をむき、こちらも四つ切り。
肉が柔らかくなったら取り出し、煮汁は漉してからココットに戻し、さらに煮詰めてとろりとさせる。肉を戻し、マッシュルームを加え、塩、コショウで味を調える。
パイ生地pâte briséeはすでに丸く伸ばしてあるものを2枚使う。直径26センチ、深さ5センチほどの型に、バターを塗り、まず一枚を敷いて、底をまんべんなくフォークで突っつく。そこへ、卵をバランスよく並べ、次に肉とマッシュルームを置く。最後に煮汁を大さじ5、6杯かけまわす。もう一枚のパイ皮を上に置き、型からはみ出る部分を切り取り(表面の飾りに使ってもいい)、ふちを水で濡らして、2枚がくっつくようにフォークの背で押しつける。上に少々の水で溶いた卵の黄身を刷毛で塗り、蒸気が抜けるように真ん中に直径1センチほどの穴を開けてから、目盛り180度で熱くなっているオーブンへ。30分ほどで表面にきれいな焼き色がついたら完成。
そのまま食卓に出して切り分け、熱々を味わう。かりっと焼き上がったパイ皮とジューシーな肉の取り合わせのみごとさに歓声が上がるだろう。(真)
子羊のモモ肉600g、マッシュルーム300g、卵4個、250gのパイ生地2枚、タマネギ1個、丁字2本、ブーケガルニ、白ワイン1カップ、油、小麦粉、塩、コショウ
●ミートパイ
トリ肉を使ったミートパイは、安上がりで調理時間も早い。もも肉を三つか四つ用意する。関節のところで二つに切り分け、左のレシピのごとく調理するが、煮込む時間は20分ほどですむだろう。煮詰めた煮汁に戻す前に、トリ肉の皮をのぞいてから身を骨からはずして、食べやすい大きさに切り分けておかなければならない。
ボクはブッフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮)を倍量作っておいて、翌日、残った肉でミートパイを作ることにしている。
●tourte
ミートパイのように、肉や魚介類をパイ皮で包んで焼く料理をtourteと呼んでいる。
●cheminée
今回のミートパイでは、オーブンに入れて焼く前に、生地の真ん中に小さな穴を開けて、調理中に出てくる蒸気が抜けていくようにしたけれど、アルミホイルでイラストのようなエントツを作って刺しておくと確実。こうしたtourte用に、陶器製のcheminéeも市販されている。
●パイ生地も手作りの方がうまい
生地を作る30分前にバター150グラムを冷蔵庫から出し、さいの目に切って室温に置いておく。大きなボールに小麦粉300グラムをとる。真ん中にくぼみを作り、そこへ、小さじ半杯の塩を入れ、さらにバターを加える。指先でそのバターを細かくしながら粉と混ぜ合わせていき、そぼろ状になったら、水をカップ半杯強加える。素早くこね合わせながら、まとめるような感じで玉にする。水は入れすぎないように、2、3度に分けて入れたい。しなやかだが柔らかすぎず、指にくっつかない、というのが目安。練りすぎるとでき上がりが固くなる。この玉をラップでくるんで冷蔵庫に最低2時間はねかせておきたい。
●丁子(クローブ)clou de girofle
東南アジアやアフリカなどの熱帯に生える常緑かん木のつぼみを乾燥させたもの。ふつう、タマネギにこの丁子を数本刺して煮込み料理に加える。特に赤ワイン煮には欠かせない。酢をベースにしたタレや、野菜や魚の酢漬けにも加えることが多い。入れすぎるとくどくなるので4人前で1本か2本が適量だ。寒い時にありがたいvin chaudにも入っている。中国料理でもシナモンや八角などとともに使われる。正露丸の成分にもなっているように麻酔効果があり、歯が痛いときには、丁子を噛みしめているといい。(真)