日本の映画界 近況報告。

 2004年の日本は「韓流」に圧倒された一年だった。TVドラマ『冬のソナタ』が大ブレイク、主演のヨン様(ペ・ヨンジュン)来日で大フィーバー、経済効果は3008億円とも言われる。これで日韓の歴史的「わだかまり」さえアッという間に氷解してしまったのだから凄い。日本の映画会社は韓国映画を買い争い、日本の配給権だけで製作費をカバーしてしまうほどの額を張るという。
 邦画では、セカチューと呼称されるまでに至った行定勲監督『世界の中心で、愛をさけぶ』の大ヒットが際立った。作品的には「ウッソー!」と叫びたいくらいにナイーブでベタなメロドラマ。日本人の精神年齢を疑いたくなる内容だが、物量宣伝作戦でブームに乗ってしまったようだ。それを上回るメガヒットは、宮崎駿アニメ『ハウルの動く城』。前作『千と千尋…』を凌ぐ勢いだ。一方、清水崇監督が自らのヒット・ホラー『呪怨』をハリウッドでリメイクした米国版『The Juon』が10月22日に公開されるや全米ヒットチャートの1位に着いたのも話題。また同監督の低予算映画『稀人』は、近々フランスで公開される予定だ。世界に通用する日本映画は、アニメとホラーということか?
 文化保護政策の一環として映画を手厚く援助するフランスと違い、日本は、映画その他(現代用語で言うところの)コンテンツの開発発信を21世紀の核となる産業として支えようとしている。あくまでもビジネスという価値観が優先されるのが日本だ。だから、日本におけるフランス映画は、こんな傾向の中で本当にマイナーな存在。しかしフランスが文化的価値観優先で突っ張ってるおかげで、ビジネス的価値観から疎外されてしまった、例えば日本の諏訪敦彦監督の新作の製作(詳細は別の機会に…)を受け入れてくれたりもするのだ。(吉)


●Rois et reine
 昨今小説や戯曲の私流映画化に心を注いでいたアルノー・デプレシャン。新作は、『そして僕は恋をする』(96年)以来久々のオリジナルドラマだ。
 「私はノラ、35歳。仕事は順調」。トレンディドラマと見まがう少々恥ずかしい主人公のモノローグで映画は始まる。もうすぐ彼女は結婚し、幸せになるだろう。だがここに至るまでの数年間が大変で、近親者の死の影に引きずられた荒れたものだった。そんなノラと平行し、昔のパートナーでヴァイオリン奏者のイスマエルが登場する。彼は物語の裏の主人公だ。悲劇調のノラと喜劇調のイスマエルの世界。重さと軽さのせめぎ合い。それでも喜劇は下品さに、悲劇はメロドラマに陥ることなく、監督はアクロバティックな姿勢で、2時間半の絶妙な映画の綱を渡りきる。彼はもう既存の文学テキストに寄りかかる必要はない。
 ノラの息子を介し二人の主人公の人生が再び接触した時、ドラマは大団円を迎える。彼女を祝福するような平穏の光が、画面に満ちる。(瑞)