昨年、『冬のソナタ』(ユン・ソクホ監督)という韓国のTVドラマがNHK衛星で放映され大ブレイク。今年に入って地上波でも放映され、主演女優のチェ・ジウや男優のペ・ヨンジュンに会うツアーを日本の旅行代理店が企画するほどの騒ぎとなっている。韓国ブームは、日本の場合、TVドラマやタレント、歌手、そして映画と芸能一般の現象となっているが、フランスでも韓国映画の隆盛を強く感じる今日このごろだ。
生理的反発をよびながらも監督の力量を認めざる得ない『魚と寝る女 L’Ile』(99)で注目を浴びたキム・ギドクの新作『春夏秋冬…そして春 』は、湖上に浮かぶ僧庵を舞台に、人の一生の変遷を四季折々の美しい自然とともに描く…。定石どおりに(?)西洋人が喜びそうな東洋の美や思想を散りばめて批判の余地がない立派な作品。この監督の強さは「迷いのなさ」。そこがどうも(吉)は苦手かもしれない…。しかし、現在の韓国映画のパワーは、キム・ギドクからホン・サンス、イ・チャンドン、ポン・ジュノ等々、実に千差万別な監督を輩出している多様性にある。『豚が井戸に落ちた日』、『気まぐれな唇 Turning gate』のホン・サンスはフランス人が好むタイプの作家性が強い監督で、mk 2が本腰を入れてサポートしている。『ペパーミント・キャンディー』で、ある男の半生を韓国現代史を背景に描いたイ・チャンドンは、『オアシスOasis』で障害者の恋愛というタブーに挑戦し高い評価を得た。彼は政府・文化観光部長官という要職にも就いて映画の振興に努めている。が、シュールにぶっ飛んだ『ほえる犬は噛まない』のポン・ジュノが(吉)の一押し! ますます韓国映画から目が離ない。(吉)
●Osama
男手を失った家族を養うため、髪の毛を切り落とされ「少年」として働きに出される少女マリナ。ほどなく、タリバンが指揮をとる少年のための宗教学校に収容されてしまう。ほぼ10年にわたり映像制作を禁止したタリバン政権崩壊後、新しいアフガニスタン映画として誕生した本作『アフガン零年Osama』は、12歳の少女の運命を通し、過去の不条理な国の記憶を鮮明にあぶり出す。実際に物乞いをしていた少女の、いつも脅えたような瞳とか細い声が痛々しい。「虹の下を通れば性が変わる」という言い伝えは、何世代にもわたり抑圧に苦しんできた女たちのため息の結晶のよう。辛いけど、是非観てほしい一本。(瑞)