Steak tartare
「生肉なんて!」とタルタルステーキを敬遠する日本人がいる。ところが、肉好きなフランス人たちは、この一品がメニューに載っていると目を輝かせてしまう。ほとんど手のかからない料理だけれど、決め手は肉の新鮮さ。それに付け合わせる薬味たちにも気を配りたい。
牛肉を使うが、脂身がほとんどないランプrumsteckやヒレ肉filetなどを、4人分として少なくとも700グラム買ってくるという、なかなかぜいたくな料理です。
まず表面や身に混じり込んでいる脂やスジをていねいにとり除くのが第一仕事。これをミキサーを使って挽くのだが、あまり細かく挽かない方がおいしいものだ。ミキサーがない人は包丁で細かく切り刻んで〈steak tartare au couteau〉などと気取ればいい。こっちの方がうまいと軍配を上げる人も多い。この挽く作業、できるだけ食べる直前に行いたい。
まずタマネギの準備。新タマネギがあったら一番だが、なければ4人分として中1、2個、できるだけ細かくみじん切り。葉の縮れていないパセリpersil plat一束は、砂が付いていたりするので、よく洗ってから水気を切り、葉のところだけ、これも細かくみじん切りにする。
挽いた肉を四等分し、軽く握って玉にする。これをお皿の中央に置いて、スプーンの背を使って軽く押さえつけ、中央に卵を立てるためのくぼみをつける。
卵も〈extra frais〉と明記されたできるだけ新鮮なものを選ぶこと。殻を二つに割って白身をのぞき、残った黄身を殻半分に入れたまま、肉の上に立てる。
あとは、そのまわりに、薬味として、みじん切りのタマネギ、パセリ、小さじ1杯分のケイパーを並べ、食卓へ。マスタード、ケチャップ、ウースターソース、タバスコソース、落花生油やオリーブ油を忘れずに添える。あとは、各人好みの薬味や調味料を肉に混ぜ込んで、味わうだけ。ワインは3、4年経ったボルドーはどうかな。(真)
台所のフランス語●pommes pont-neuf…
フライドポテトは太さや形状によって名前が変わる。いちばん標準的なものはpommes pont-neuf、それより細くなるとallumettes、もっと細ければpailles、薄い輪切りならchips…。
台所の本
●Jean-Pierre Coffe
《Comme à la maison 1 et 2》
テレビによく登場し、ちょっと押しつけがましい料理評論家がコッフ氏。著書も多いが、おすすめはこの2冊。〈サラダ〉、〈パテ・テリーヌ〉、〈魚〉、〈スープ〉、〈家禽〉など13章にわたって、必要な道具、調理のコツ、こぼれ話、レシピなどが、きわめてまじめにわかりやすく書かれている。特に材料の選び方は詳しく記され、大いに参考になりそう。赤ラベルの基準は何か、もわかってしまう。レシピは、フランス料理の基本ともいうべき料理が並び、それほど難しくはないが、どこまでも本格的で、時間をたっぷりかけて作る心がけが必要だ。(真)
●フライドポテト pommes de terre frites
タルタルステーキの付け合わせにはフライドポテトがなによりだ。
ジャガイモ(4人分なら約800グラム。charlotte種やモロッコ産の大きめの新ジャガなど)の皮をむき、好みの太さに切り分ける。時間があったら、これをたっぷりの水に20分ほど浸したい。でんぷん質が溶け出てくっつきにくくなるからだ。ザルにとってから、布巾の上に広げ、水気を吸い取るようにする。
揚げ物用の専用鍋friteuseか深めのフライパンに植物油(ボクは落花生油huile d’arachide。こしてから暗所で保存すれば数回使える)を、カラリと揚がるようにできるだけたっぷりとる。2度揚げすることになるが、1度目は、ふつうテンプラを揚げるときの温度(170度)でいい。油の温度が急に下がらないように、800グラムなら3回に分けて揚げた方がいい。8~10分ほどたって少し色がついてきたな、というところで引き上げ、グリルにでものせて油を切る。ここまでを、タルタルステーキを準備する前にやっておくと、後が楽だ。
さあ、タルタルステーキの準備が完了というところで、再び油を熱くする。
1回目よりやや熱めにし(180度。軽く煙が立つという感じ)、ジャガイモをやはり3回に分けて加えていくが、今度は早い。ジャガイモが黄金色にカラッと浮き上がってきたらでき上がり。グリルにのせて油を切り塩を振りかけ、別皿にとってタルタルステーキに添える。
新ジャガだったら、皮付きのまま太めのフライドポテトにすると絶品!