宮崎駿、86年の作品『天空の城ラピュタ』が公開される。なんと17年前の作品ということになるが、見事に時空を超越した傑作であることが確認できる。アニメの特性を活かしたファンタジー、〈空を飛んだり浮遊したり〉は宮崎アニメ得意のモチーフであり、秀逸な演出と作画でその快感を観客に伝える。空から降って来た少女、シータとパズー少年の冒険活劇は、”天空の城ラピュタ”をめぐる壮大なドラマへと息をもつかせぬ展開をみせ、「笑いあり涙あり」という旧知の宣伝文句そのまま「ホロリと来る感動」のラストへ向かう。人類と科学と権力と幸福と自然、そういうことをさらっと根底に踏まえながら…。映画的にもテーマ的にも、こんなにいっぱいの要素を一つの作品に素晴らしい配合で盛り込む宮崎駿は天才以外の何者でもない。今だから『千と千尋…』と『…ラピュタ』のキャラクターの類似に気づいたりもして面白い。
かつて夏休みに帰る日本で、恒例の宮崎アニメを観るのを楽しみにしていた。比類まれにして普遍的、繊細で雄大な傑作の数々が、なぜ世界に羽ばたかないのか? 歯がゆかった。『となりのトトロ』、『紅の豚』、『もののけ姫』、世界に少しずつ輸出され始めた宮崎アニメの評価を決定づけたのは、やはり昨年の『千と千尋の神隠し』の成功だろう。日本でも興行記録を塗り替えた同作品は、フランスでも動員130万人を超え、いわゆる〈アニメおたく〉の域を出た観客を獲得。同時にアニメ作品として初のベルリン映画祭での金熊賞受賞を皮切りに、現在進行形の02年度のアメリカ方面での映画賞アニメ部門を総なめにしている。期が熟したと言おうか、”本物”は必ずいつか評価されるのだ! と言おうか…。宮崎駿は日本が世界に誇れる文化財産である。(吉)