最近、パリのあちこちにチェーン店系のパン屋さんをよく見かける。モダンながら、フランスの田舎を思わせるインテリア。店の奥にはパンを焼く作業場が見わたせ、清潔。値段は少し高めだが品揃えは豊富。赤と白のユニフォームを着た店員は、社員教育が行き届いているのかテキパキ働き、愛想がいい。私の家の近くに開店した店は、週末、外に行列ができるほど繁盛している。でも何か気になる。
同じパン屋さんがパリのあちこちにできてしまっては、それぞれのカルチエが持つ特徴が薄れてしまうのではないか。それでは残念だ。あの店のおばさんは意地悪だけどバゲットは美味しいとか、パン オ レザンならここ、というようにパン屋さんには個人の顔を保っていてほしい。パン屋に限らず様々な店の集まりがカルチエ独自の雰囲気を創りだすのだから。
家の近くに人気のパン屋がある。日によってパンやケーキの焼き具合にむらがあったり、ピザの具が多い日、少ない日。でも心がいっしょに焼き込んである。反対に、チェーン店のパン屋は一様に美味しいけれど、どうしてもマニュアルどおりの味が伝わってくる。
気になるのは、こういったチェーン店では、個人の顔ではなく会社、資本と、どうしてもお金の顔が見えてしまうことです。その結果、パリの街の個性が薄れてしまっては寂しいと思うのです。(小野のぞみ)