ボーヴァル動物園はパンダ鑑賞の穴場だ。
本日はユアンメンお披露目の日。パンダ・ファミリーは動物園の門をくぐり、15分以上は歩く小高い丘の上にいる。35ヘクタールの園内は広く、主役は奥に控えているという感じ。本園は2012年にパンダのカップルを迎えたのに合わせ、中国の赤門が雰囲気たっぷりのパンダゾーンを創設。入り口付近にはレッサーパンダもいた。
パンダゾーンに入ると黒山の人だかりが見える。屋外スペースでは、パパパンダのユアンザイが歓声を浴びていた。岩に顔を乗せたり、急にのけぞったり、木の上からこちらに視線を送ったり。パリコレモデル顔負けの決めポーズで、堂々たるスターの貫禄だ。
奥にはガラス張りの部屋が広がっていた。こちらではママパンダのフアンフアンが、一心不乱に笹を食べている。部屋はやや下方にあり、客は覗き込むような形。パンダを刺激せぬよう、彼らから人間はほとんど見えない作りだという。
どこからか「赤ちゃんはどこ?」という声が聞こえる。たしかにパッと見ではわからない。だが目を凝らすと、部屋の奥の隅に薄汚れた赤茶色の物体がある。だがまだお休み中のようで微動だにしない。いつ起きるかわからないので、待つ間に他の動物を見ることにした。パンダゾーンの一角では、園の創設者フランソワーズさんと、パンダ担当の責任者デルフィーヌさんがサイン攻めにあっていた。
さて数時間後に戻ったら、まだ赤ちゃんパンダは睡眠中だった。しかし数分後にママパンダが赤ちゃんの方へ歩き出した。そして手でつついて起こした後、口で引きずり移動させた。客からはどよめきが起きる。それからママは赤ちゃんを膝にのせながら遊び始めた。目の黒毛のタレ目効果が心憎く、親子そろってなんたる愛らしさ。はるばる来た甲斐があった。
公開初日は報道陣も駆けつけ、午前中はさすがに人が多かった。とはいえ前に人がいても、少し待てば問題なく見学できる。そして夕方になるとパンダゾーンはすっかりガラガラとなり、やや拍子抜けした。日本の異常なパンダフィーバーを知る身としては、鑑賞の穴場と断言したい。ちなみにヨーロッパでは他にもベルギーのブリュージュレット、マドリッド、ウィーン、エディンバラ、ベルリンにもいる。ヨーロッパ・パンダ鑑賞の旅も計画できそうだ。