政府は文化施設の再開日程を発表した。映画館は10月末の営業停止以来、約半年ぶりの5月19日に再開を目指す。観客収容率35%で始まり、問題がなければ6月9日に65%、6月30日には100%に移行。最初はマスク着用が義務で、ポップコーンなど菓子販売は禁止となる。
再開決定には安堵の声が上がるも問題は山積み。最大の問題は膨大な映画の数。仏映画150本、外国映画250本の計400本以上が待機中なのだ。国立映画映像センターは渋滞解消策として、制作の公的援助を受けた作品でも返金なしでSVOD(定額制動画配信)プラットフォームに直接配信が可能とした。この特例措置の恩恵を受けた作品に、ネットフリックスで公開中の『Madame Claude (夜の伝説 マダム・クロード)』がある。しかし宣伝もなくSVOD上で存在感を出すのもまた困難な道であり、特例は映画会社にとって救世主ではないようだ。
5月19日に劇場公開されるのは約30本。昨年10月に上映打ち切りとなった作品(セザール賞作品賞受賞の『Adieu Les Cons』、アカデミー賞国際長編映画賞受賞の『Drunk(アナザーラウンド)』や、公開延期後にようやく日の目を見る話題作などが並ぶ。日本で大ブームの『鬼滅の刃 (仏題:Demon Slayer – Kimetsu no Yaiba – Le film : Le train de l’infini)』、アヌシー映画祭最優秀オリジナル音楽賞受賞の『音楽 (On-Gaku : Notre Rock !)』、京都アニメーション渾身の新作『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン Violet Evergarden – le film』と、ジャパニメーションも粒ぞろい。
コロナ禍で気分が鬱々としやすいなか、まずはフランスの鬼才、カンタン・デュピューの不条理コメディ『Mandibules』をお勧めしたい(冒頭ポスター)。巨大な蝿の調教に挑む男二人のオフビートなロードムービーで、ネジの外れたパステルカラーのファンタジーに気分も軽くなる。吃音女性役の俳優アデル・エグザルコプロスの腹の据わったコメディエンヌぶりも必見。精神的に余裕がある人には女子高生スキー選手が主人公の『Slalom』もお勧めだ。昨年のカンヌ映画祭が選んだ「カンヌ2020」レーベルの一本でスポーツ界の性暴力の闇に迫っている。(瑞)