フランスでも野菜の温室栽培が増えてきていて冬でもトマトやクルジェットが八百屋の店頭に出るけれど、どんなに逆立ちしても旬の野菜にはかなわない。フランスの人々はそんな旬の野菜を上手に料理することを知っている。
たとえば春。三月末に八百屋にも出まわるタンポポの葉が春をつげる。それに続くように、小ぶりで香りよく葉がついたまま束ねてある新ニンジンや新カブ、ラディッシュ、茎つきの小さな新玉ネギ。そしてホワイトやグリーンのアスパラガスにフランス人の目が輝く。5月に入ると、サヤ入りのソラマメやグリーンピースの柔らかな甘みに心ひかれ、そしてアルティショーやホウレンソウ…。
タンポポの葉はベーコンといっしょにサラダにし、その軽い苦みを楽しむ。ニンジンやカブ、小玉ネギは、子羊肉と煮込めば、その肉のうまみをすい込んだ野菜のうまさに目をみはる(7月1日号で新しいレシピを紹介)。グラッセと呼ばれる砂糖少々が入ったいため煮は肉料理に添える(コラム参照)。アスパラガスのうまみはシンプルにゆでたりいためたりして味わう。ソラマメは、ゆでてから薄皮をむき、薄切りにした新玉ネギと組み合わせてサラダにする。グリーンピースは、ゆでてからバターを混ぜ入れれば肉料理にも魚料理にも合う付け合わせ。アルティショーは丸ごとゆでてアントレにしたり、fondという花托をとり出してから南仏風にしたりする。ホレンソウはさっとゆでてから、ヤギ乳チーズやサケとタルトにすればごちそうだ。
夏野菜といえばなんといってもトマト。ブルターニュ産やオランダ産のように温室栽培ではなく、野外で太陽をいっぱいに浴びて育った、形や色さまざまなtomate pleine terreと呼ばれるトマトのおいしさ! 皮ごとかじりつくと、酸み、甘みが凝縮された風味が口中に広がる。そのままサラダにするのが一番だが、ほかの野菜と組み合わせてニース風サラダ(コラム参照)にするのもおすすめだ。やはり夏になるとおいしくなるクルジェットやナス、赤ピーマンと煮込んだラタトゥイユは地中海の夏の陽を思い出すような素晴らしい野菜料理(こちらは8月1日号で紹介)。クルジェットは、衣をつけて揚げたり、さっとグリルしてミントの葉を散らせばさわやかな一品になる。赤ピーマンは、バスク風にゆっくりと煮込んでピペラードにしたり、ナスは、イタリア風グラタンのパルミジャーナが屈指だが、フランスでも家庭でつくる人が増えきている。(真)
Comment choisir les légumes
野菜は新鮮であればあるほどうまい! タンポポやホウレンソウ、葉つきのニンジン、カブ、玉ネギは、日がたつと葉がしなびてくるのでわかりやすい。アスパラガスは根元にしわがよってなく、ふっくらとして穂先もいたんでないもの、クルジェットは軽く押さえてみて中がしまっているもの、ナスはへたが変色してなくしっかりとしたものを選びたい。そして買ったらなるべく早く料理することが大切だ。ソラマメ(写真)やグリーンピースなどは、その甘みを味わいたいのなら買ったその日に調理。
Carottes glacées
ニンジンは皮をむき、小さかったらそのまま、大きめだったら太めの短冊か輪切りにする。鍋にをバターを大さじ1杯とって中火にかける。ニンジンを入れ、砂糖を、ニンジン400グラムなら小さじ1杯の見当で加え、からめるようにしながらしばらく混ぜ合わせる。水をひたひたに注ぎ、塩を二つまみ足し、沸騰してきたら弱火にし、ふたをして水分がほとんどなくなるまで火を通し、全体を混ぜ合わせ、きざんだパセリを散らす。新カブや小玉ネギも同じように料理できるし、ニンジンとミックスにしてもいい。シロップ状になった煮汁がからんでツヤが出るのでglacé〉と呼ばれる、肉料理にも魚料理にもよく合う春らしい付け合わせ。
Salade niçoise
ソース・ヴィネーグルで和えられたサラダは、さっぱりとおいしく、暑い夏向けの料理だけれど、これだけでは体がもたない。チーズや生ハムなどが入ったミックスサラダにするといい。中でもニース風サラダは、トマト、ゆでたサヤインゲン、サラダ菜、オリーブに、缶詰のツナやゆで卵も入って栄養のバランㇲもいいし色どりもきれい。油漬けのアンチョビーや紫玉ネギの薄切りものせて味にアクセントをつけたい。