フランス人は、それぞれの料理にアクセントを付け加えてくれる香草(ハーブ)herbeの役割りの大切さを知っている。香草が活躍するのは、なんといってもプロヴァンス料理だろう。というのもパセリ、タイム、ローズマリー、バジリコなど、気候にめぐまれた南仏産が多いからだ。
今やフランス全国で使われている香草になったパセリpersilも南からやってきた。葉の縮れていないpersil platが香りも風味もよく、縮れ葉 persil frisé は料理の飾りに使われるくらい。葉をきざんでからサラダに散らしたり、煮込み料理の仕上げに振りかけたり、細かくきざんだニンニクといっしょに、エビのオリーブ油いために加えたり、などと大活躍だ。茎を捨ててはいけない。ローリエの葉と束ねれば立派なブーケ・ガルニになる。 ひと束を使いきれなかったら、残りをコップにでもさしておくと4、5日は持つ。
タイムthymもフランス中に広がった。その南仏っぽい香りは、ラタトゥイユや南仏野菜のタルトに欠かせないし、ブーケ・ガルニに入って、カスレやポトフなどのさまざまな煮込み料理の風味を盛りたてる。
イタリアやプロヴァンスの料理に欠かせないバジリコbasilicもパリで簡単に手に入る。値は少々張るけれど、その独特な香りは病みつきになる。熱に弱いので、きざんでからサラダに加えたり、オムレツの仕上げに加えたり、パスタ用のトマトソースに加えたり、魚のカスパッチョに散らしたりして、地中海の香りをたのしみたい。
ローズマリーromarinは松ヤニを思わせる香りを持っているが、子羊肉の風味とみごとにマッチするのだ。その葉をきざんでからまぶしてローストにしたり、煮込みならブーケ・ガルニにひと枝加えるといいだろう。ローズマリーの強い香りが肉のうまみを殺さないように、控えめに使いたい。
タイムと並んで、ローリエの葉もブーケ・ガルニには欠かせないものだ。ただし、2枚以上入れると、ローリエくさくなってしまう。ふつう乾燥した葉を使う。
セージsaugeもイタリア人が好む香草で、たとえば、子牛肉料理のサルティンボッカなどには欠かせない。ぼくはサルティンボッカが大好きなので、数年前に、庭の日当たりのいいところに植えたら、どんどん広がっている。子牛肉料理だけでなく、鶏肉や子羊肉の煮込み料理、ミートソースなどの味わいを高めてくれる。乾燥させても、匂いが強く残っているのが頼もしい。(真)
Persillade
パセリとニンニクを細かく刻んで混ぜ合わせたものをペルシアードという。エビや鶏肉をオリーブ油やバターでソテーしてから混ぜ入れれば、素晴らしい香り!カエルのプロヴァンス風の匂い、味わいをつくり出しているのもペルシアードだ。セープ茸やジロール茸をソテーするときにもいい。エスカルゴに詰めてあるのは、ペルシアード +バター。熱々の殻からとけ出したソースにパンをひたして食べる幸せ。自家製の香りにはかなわないけれど、乾燥ペルシアードの瓶詰も市販されている。
Estragon, ciboulette, cerfeuil
エストラゴン(タラゴン)estragonは、繊細でいながら独特な香りを持ち、細かくきざんでからマスタードやビネガーの香りづけに使われているし、魚や肉料理に添えられるソース・タルタルやソース・ベアルネーズにも入っている。鶏肉や魚の煮込みに加えるのもおすすめだ。
針のように細いシブレットcibouletteは、どこかニンニクっぽい風味があり、みじんに切ってからサラダに振りかけたり、フレッシュチーズに混ぜ入れたり、オムレツに入れるといい。庭に植えておくと、初夏に美しい赤紫色のネギ坊主をつけてくれるのだが、やはりシブレット風味で、食べることができる。白身魚のカルパッチョをつくって、シブレットを散らし、そのネギ坊主を飾りにすると、絵のように美しい。
セルフイユ(チャービル)cerfeuilの葉は、やさしい香り。ポタージュやオムレツの仕上げに散らしたり、冷製の魚料理に添えるビネグレットソースに加えたりしたい。ホタテ貝のリゾットに散らすのもいい。熱を加えると香りが飛んでしまうので注意したい。