メインの一品は主婦・主夫の腕の見せどころだけれど、ワインやビールのつまみにもなるアントレはアイデア次第、でき合いのものも利用したりして、肩の力を抜いてたのしく用意したい。
シャルキュトリcharcuterieという豚肉と豚肉の加工品を扱っている肉屋に行けば、ソーシソン、生ハム、豚肉をラードで煮込んだリエット、各種パテが並ぶ。どれもそのままアントレになるけれど、大皿に何種類かを盛り合わせてみんなが好きなものを選べるようにし、サラダ菜やコルニションを添えたりするとたのしい。キャロット・ラペというニンジンのせん切りのヴィネガグレット和え、ルムラードという根セロリのせん切りのマヨネーズ和えなども置いてある。時間がなかったらそれで間に合わせることができて便利だが、キャロット・ラペには干しブドウを混ぜ入れたり、ルムラードには軽くレモンをしぼりかけて、パセリを散らすなどひと手間かけたい。
魚屋もアントレになる食材の宝庫だ。タイやスズキをおろしてもらって持ち帰り、みじんに切って、やはりみじんに切ったパセリやバジリコを混ぜ入れれば、ちょっと豪華な魚のタルタル。さまざまなゆでエビには、マヨネーズ、それも自家製のマヨネーズを添えれば、たのしい食事のプレリュード。くん製のサバがあったら、薄く切ってレモンを添えるだけ。ニシンの油漬けには、ゆでたジャガイモを少し冷ましてお供させる**。オレンジ色をしたアドックという魚のくん製は薄くそぎ切りにし、アネット風味の生クリーム添えれば、スモークサーモンとはひと味違ったおいしさだ。
アボカドにゆでエビを添えた一品も定番のアントレだ。アボカドは食べごろのものを選ぶのがむずかしいので、八百屋に「Pour demain midi あすのお昼用に」などと頼むことにしよう。ゆでエビは頭を切りとり殻をむく。ぼくは頭の中に詰まっているミソもかき出しておく。アボカドを二つに切り分け、大きな種をとり出し、変色しないようにレモンのしぼり汁をこすりつけておく。マヨネーズを作り、押しつぶしたミソを混ぜ入れ別の器にとる。きれいに盛りつけて食卓に出せば、拍手がわく。(真)
Charcuterie/Boucherie/chevaline
豚肉や塩蔵豚肉demi-sel、豚肉が原料のハム、生ハム、ベーコン、ソーセージなどを売っているのがシャッルキュトリだけれど、最近はマージンの大きい各種総菜がにぎやかに並ぶ。それに比べるとブシュリはまだまだ本格的肉屋という感じがする牛肉専門店。ほかにも子牛肉、子羊肉を売っているし、鶏肉やウサギ肉、豚肉も売るようになってきているので、今晩は肉料理が食べたいなあと思ったらブシュリに行けばことが足りるようになった。ほかにシュヴァリーヌという馬肉専門店(写真)もあったのだが、ずいぶんと減ってしまった。
Huître, moule, palourde, bulot…
魚屋に置いてあるさまざまな貝も素敵なアントレになる。生ガキは持ち帰って自分でむくしかないが、ノエルなどには張り切って生ガキと格闘する人も多い。白ワインを振りかけて蒸し煮にし、殻が開いたらレモンをしぼりかけて食べるのも悪くない。ムール貝やパルルドというアサリもパセリのみじん切りをたっぷり加えた白ワインで蒸し煮にし、鍋ごと食卓に出してアントレにする。ビュロというバイ貝はすでに塩ゆでにしてある。そのまま出してもいいのだが、身をひき出してそぎ切りにし、キュウリやトマトといっしょに、マスタードをきかせたドレッシングで和えるといい。
Entrées au saumon
養殖サケの切り身でもタルタルやマリネなどぜいたくなアントレを用意できる。できたらあまり脂っこくないラベル・ルージュのものがほしい。まず残っている中骨をとげ抜きでとりのぞく。タルタルはタイやスズキのタルタルと作り方は同じだが、酸みの強い青リンゴ、グラニースミスを皮ごと薄く切り、さらに小さく切り分けて混ぜ入れる。マリネは、まずオリーブ油に塩、コショウ、みじんに切ったアネット適量、レモンのしぼり汁少々を混ぜ入れたマリナードを用意する。ここに薄くそぎ切りにしたサケを30分ほど漬け込むだけだ。