フランス人に一番好まれている野菜はジャガイモ*。数かぎりないレシピにめぐまれ、年に一人当たり50キロの消費量というからすごい。ぼくらも、フランス人並みにジャガイモをいろいろと調理してみたい。
ジャガイモは種類が多く選ぶのに迷うところだが、マッシュポテトやフリット、あるいはポタージュに使うのなら「pour la purée(マッシュ用に)」(A)、いためたり、煮込み料理に入れたり、サラダに加えたりするのなら「chair ferme(火を通してもくずれない)」(B)と八百屋に注文するだけでいい。
まずは(B)タイプを使って塩ゆで。ジャガイモを、小さいものはそのまま、大きかったら二つか三つに切り分け、鍋にとる。ジャガイモがすっかりかぶるように水を張り、塩少々を加え、中火でゆでていき、ペティナイフを刺してみて、ジャガイモがすっと落ちるようになったらでき上がり。さまざまな魚料理、ワインで煮込んだ肉料理などにうってつけの付け合わせだ。バターと塩の華も添えるといい。ニース風やサヴォワ風サラダ用なら(この連載の⑦「フランス人はサラダ好き!」参照)、ジャガイモの風味が残るように皮ごとゆでてから、皮をむいて切り分けて加える。
マッシュポテトは、時間がなかったらインスタントの粉末を使ってもいいのだが、やはり自家製にはかなわない。(A)タイプ、それもビンチュbintje種がおすすめだ。
皮をむいてひと口大に切り分け、柔らかくなるまで塩ゆでにする。パソワールにあけて水気を切ったら鍋にもどし、マッシャーできめ細かくなるまで押しつぶす。牛乳適量で好みの固さにし、味をよくするためにポマード状生クリームやバター適量を混ぜ入れ、塩、コショウで味を調える。好みではナツメグをおろして加える。ローストした牛肉や鶏肉の付け合わせとして最適だ。
本格的なマッシュポテトには、ジャガイモ1キロに対しバター250グラムというレシピもあるが、コレステロールが心配な人はさけた方がいいでしょう。火を通して味つけしたひき肉をマッシュポテトでおおってオーブンで焼けば、みんなが大好きなアシ・パルマンティエ。ひき肉のかわりに黒ブダンにしてもうまい。(真)
*ジャガイモファンのオヴニースタッフによるジャガイモ特集はこちら
Livres sur la pomme de terre
マーナ・デイヴィス『ポテト・ブック』
日本の友人からプレゼントされた名著の復刻本。著者がアメリカ人だけに、彼らが好物のベイクド・ポテトやポテト・サラダなどのレシピが充実しているが、単なるレシピ本ではない。隅々まで(アメリカ人の)ジャガイモへの愛にあふれていて、伊丹十三の名訳もあって、読み出したらとまらないおもしろさ! 世界各地のジャガイモ史、ジャガイモの正しい買い方、貯蔵法なども大いに参考になる。それに加えて著者の夫ポールの味のあるイラスト、そしてトルーマン・カポーティの序で心が大きくなる。「(…)ベルーガのキャビアをポテトの上に小山のように盛り上げる」!
Joël Robuchon
『Le Meilleur et le plus simple de la pomme de terre』 :
今は亡き名シェフ、ジョエル・ロビュションの一冊。詳細なジャガイモの歴史、種類、栄養価に次いで、「一番素晴らしく、いちばん簡単なジャガイモ」の100にわたるレシピが続く。スープ、サラダ、付け合わせ…それだけで立派なメインの一品になる料理まで網羅されていて、ジャガイモ料理のレパートリーがぐんと広がること間違いなし。
Potage parmentier
簡単にできるジャガイモのスープです。(A)タイプのジャガイモ中5個の皮をむき、さいの目に切る。玉ネギ2個はみじん切り(あるいは長ネギの白いところ3本を小口切り)。厚めの鍋にバター大さじ1杯をとり、玉ネギを加え、ふたをして弱火で炒め煮し、しんなりしたら鶏ガラのブイヨン1リットル半とジャガイモを入れる。最初は中火、沸騰したらジ弱火にし30分ほど煮る。ジャガイモが柔らかくなったら、ハンドブレンダーできめ細かなクリーム状にし、ポマード状生クリーム大さじ2杯を混ぜ入れる。スープが濃すぎるようなら牛乳少々を足し、塩、コショウで味を調え、小さく切ったシブレットを散らす。4人分です。