フランスの肉屋で目を引くのは、かずかずの腸づめ(ソーセージ)だろう。ソーシソンとソシスがあって、大まかにいうと、ソーシソンは薄く輪切りにしてそのまま食べ、ソシスは火を通してから味わう。
ソーシソンは、主に豚肉を、粗く、あるいはきめ細かくひいてから塩、コショウ、スパイスで味つけして腸につめ、14度くらいの乾燥したところで4週間以上乾燥させる。細めでU字形のsaucisse sèche、直径5センチから8センチほどのsaucisson de montagne、粗びきの豚肉をつめた太めで高級品のrosette、豚肉の脂身が多いところを細かくひいてつめたsalamiなど。ほかにも、ロバやカモの肉をつめたもの、クルミやノワゼット、イチジクなどをつめたソーシソンもある。ソーシソンはきちんと乾燥されていて、できるだけ固いものを選びたい。よく切れる包丁で薄く切って、コルニションなどを添えれば、ビールやワインの極上のつまみになる。
ソシスといえば、どこの肉屋にもある直径3、4センチほどのソシス・ド・トゥールーズsaucisse de Toulouse。ひいたり、包丁でたたいてから塩、コショウなどでシンプルに味つけした豚肉がつめてあり、長いままとぐろを巻いているものと、一人前用の長さのものとがある。中の脂が出るようにフォークやナイフでつっついてから、グリルしたり、フライパンでソテーする。早く焦げないように弱火で、ときどきひっくり返しながら焼いていく。細くて直径2センチほどのものはシポラタchipolataといい、やはりグリルやソテーに向いている。
くん製されたソシスもいろいろあるが、フランシュ・コンテ産で、トウヒやモミの木片で時間をかけていぶされた太めのソシス・ド・モルトーsaucisse de Morteau が、やわらかな風味で最高だ。太さによって30分前後弱火でゆでるのだが、ゆでる前にナイフでつっついたりするとうまみが逃げるので避けたい。ホイルに包んで200度に合わせたオーブンで40分ほど焼くと表面はあめ色、中はジューシー、うまい!付け合わせはジャガイモのソテー。同地方のソシス・ド・モンベリアールsaucisse de Montbéliardはやや細めでくん製風味が強い。同じように調理し、レンズ豆の煮込みでというのが定番だ。(真)
Mortadelle
ソーシソンの中でも、太さで比をみないのがイタリアのボローニャ名産のモルタデッラmortadella(イタリア語)。なんと直径15センチ以上はあり、中には30センチ近いのもあるという! すでに火を通してある豚肉や子牛肉をペースト状にしたものが材料で、その薄いバラ色の身にピスタチオや小さく切った脂身が混ぜ入れてある。スーパーでも手に入るが、できたらイタリア食材店に出かけ、ごく薄く切ってもらって持ち帰り、その繊細な風味を味わいたい。
Saucisses piquantes
マグレブ地方の辛くて真っ赤な細めのメルゲーズmerguezは、脂気がよく出るようにつっついてから、じっくりと焼き上げる。脂の量が多いので焼き上がるとかなり小さくなってしまう。クスクスに欠かせない。ソシスだ。唐辛子粉が混ぜ入れてあるスペインやポルトガル産のチョリソchorizoも小さく薄く切り分けて、オムレツに入れたり、煮込み料理に加えたり、あるいはジャガイモベースのスープに浮かべたりと、使い勝手が多い(過去にこのようなレシピも紹介しています)。ポルトガル産の中には、やや太めで、ちょっとだけ辛いチョリソがあり、そのまま薄く切って味わう。
ステーキの付け合わせは、小さく切り分けてからカリカリッといため上げたジャガイモ、塩ゆでしたサヤインゲン、辛みが少々あるクレッソン菜のサラダなど。
Saucisse de Francfort
ホットドッグに使われ日本人にもなじみのソシス・ド・フランクフォールsaucisse de Francfortは、すでに火を通してあるペースト状の豚肉をつめたもので、軽くくん製してあることが多い。フライドポテトなどを添えたものが、カフェやレストランでもメニューにのっているし、シュークルートにも入る。これと親戚のソシス・ド・ストラスブールは、細めで、赤い皮(食べられる)が特徴。薄い褐色のものはクナックknackと呼ばれる。子どもたちにも人気のソシスだ。いずれも皮がやぶれないように弱火で、太さ次第で5分から10分ゆでるだけ。適当に切り分けてマスタードを添えればつまみになる。