フランスの家庭に招かれると、メインのあとにボウルからあふれそうなほどのグリーンサラダが出てきたりする。さっぱりしたサラダの風味が、ときにはしつこいほどのメインの後味を追いやってくれ、チーズやデザートがさらにおいしくなるという知恵にちがいない。
八百屋にはさまざまなサラダ菜が並んでいて、フランス人は、形や色、歯ざわりや苦み加減、季節感を考えながら選んでいる。
日本のレタスに似ているのがイスベルグicberg(レチュ・ポメlaitue pommée)。もう少し歯ごたえがあるのがバタヴィアbataviaで、フランスで一番よく売れているサラダ菜だろう。細長く緑が濃いロメーヌromaineは、シャキッとした歯ごたえと軽い苦みがうれしい。葉が縮れているフリゼfriséeもかすかな苦味がある。スカロルscaroleは肉厚で独特のかみ心地。ほかにも葉が赤紫色のトレヴィーズtrévise、ロケットroquette(ルッコラのこと)、辛子に似た風味がうれしいクレッソンcresson、秋冬が旬の歯ざわりが柔らかいマッシュmâche…。グラタンにされるアンディーヴendiveもサラダにするとうまい。
こんなサラダ菜たちから一種類だけ選んでサラダにしてもいいし、ときには好みでいろいろと混ぜ合わせてみるのもたのしいものだ。忘れてはいけないのが、サラダ菜に土や砂、虫がついていることもあるので、まず水洗いすることだ。サラダ菜専用水切り器essoreuse à saladeを使って、水気をしっかり切ったら、ドレッシングと混ぜやすいように大きめのボウルにあけ、好みできざんだパセリや薄く切った玉ネギを散らす。
サラダドレッシングsauce vinaigretteを作ってみよう。ボウルにワインビネガーをとり、塩、コショウ少々を加えて混ぜ合わせたら、ヒマワリ油やオリーブ油を加え、さらに勢いよく混ぜる。ふつうビネガー1に対して油3の割り合いだが、サラダ菜本来の風味を生かしたいのなら、ビネガーや塩を控えめにする。食べるすぐ直前に、そのドレッシングをサラダ菜にかけまわし、丁寧に混ぜ合わせればでき上がり。(真)
Salade composée
フランスのレストランで、大きな皿に入ったボリュームたっぷりのミックスサラダsalade composéeで昼食をすます人が急増中。サラダ菜、ゆでたジャガイモ、トマトに、各種チーズ、生ハム、カモの薫製肉、スモークサーモンなどが組み合わされ栄養のバランスもいい。家庭でも、ニース風サラダ(トマト、サヤインゲン、缶詰のツナ、ゆで卵、アンチョビー…)、サヴォワ風サラダ(ジャガイモ、くん製ソーセージ、ボーフォールチーズ…)*などを作ってみたい。サラダ菜にムール貝やエビなどを入れてアントレというのもおすすめだ。*ovninavi.com/639_fromage/
Sauce vinaigrette
シンプルなグリーンサラダなら、ふつうのソース・ヴィネグレットでいいのだが、それでも、サラダ菜の風味次第で、油をオリーブ油にしたり、ヴィネガーをレモンのしぼり汁やバルザミコ酢にしたり、マスタード、マヨネーズ、みじんに切ったニンニクやエシャロットなどを少量加えたりなどと工夫すると、ちょっと自慢できる味になる。たとえば、冬ならではのアンディ―ヴのサラダには、細かくくだいたクルミやロックフォールチーズを散らし、クルミ油を使ったドレッシングで和えたりしたら、サラダとあなどるなかれ、大きな拍手。
Essoreuse à salade
くり返すようだが、サラダ菜はまず大量の水で洗うこと。虫がついているのが心配なら、ビネガーを少量加える。洗ったら、サラダ専用水切り器のざるに入れ、ふたをしてハンドルを回すと、歯車仕掛けのおかげでざるがうなりをあげながら急回転し、遠心力でサラダの水気がたちまち切れてしまう。各家庭に一つはあるすぐれた道具。以前は、panier à saladeというサラダ菜専用の金属製の網に入れ、窓やバルコニーから勢いよく振ったものだ。すると下を歩いていた通行人が「あれ、雨?」と上を見上げたのはなつかしい風景。15€くらいから。