日本料理は、漬けものにはじまり、干もの、煮もの、みそ汁、麺のたれなど塩がかなりきいていて、その塩味を砂糖や味りんなどの甘みが入ってまろやかにしているといえるだろう。それにひきかえフランス料理では、各家庭で多少異なるものの、塩加減は一般的にひかえめ。それだから砂糖もほとんど入らないことになる。せいぜいトマトソースを作るときに、トマトの酸みをやわらげるために一つまみ、二つまみと入れるくらいだ。
そうはいっても、塩は、各食材のうまみをひき立てひき出すうえで欠かせない。肉や魚介類をソテーするときには、焼く前に塩を振りかける。煮込み料理でも、はじめから塩適量を加える。ただ煮ていくうちに水分が減って塩味が濃いめになるので、最初はひかえめにし、最後に味見してから塩加減を調えたい。チーズを使ったグラタンなどは、チーズの塩気だけで十分なことが多い。鍋で肉を炒めてからワインなどを注いで煮込む場合は、鍋の外で肉に塩を振る方がいい。鍋に入れてから塩を振ると、肉のまわりにも塩が散ってどうしても塩気がきつくなってしまう。また塩の容器から直接塩を振り入れると、塩が多めになりがち。ふたができる器に移しておき、指で一つまみ、二つまみと振りかける方が正確です。
とにかく塩の入れすぎは禁物、ひどいときには、料理を台なしにしてしまう。血圧が高いなどの健康上減塩している人も増えているので、自分の好みよりは少なめに塩をし、もう少し塩気がほしい人のためには、卓上に風味のいい塩の華などを置いておくことにしたい。ところが、その卓上の塩を、味もみずに料理に振りかけてしまう人がいるが、心をこめて作った人に失礼この上ない。
フランスのスーパーに各種の塩が並んでいる。ほとんどが海水塩で、南仏やブルターニュ地方産が多い。丸い筒などに入っているきめ細かな塩はsel finといい、どんなときにでも使える。カニなどの甲殻類をゆでるときは、ほとんど海水に近い塩加減なので大量の塩が必要だ。そんなときは、sel finの半額くらいで買えるgros selという粗塩を利用したい。(真)
Fleur de sel
塩の華は、塩田の海水が結晶化しはじめると、風力によって表面に浮かんでくる薄い結晶を採取したもの。色は真っ白だけれど、精白塩ではなく天然塩。カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が多く、ほかの塩よりはまろやかな味わい。南仏のカマルグ産やブルターニュのゲランド産が名高い。ごく少量しかとれないこともあって高価。ふつうふたができる小さな容器に入っているので、そのまま食卓に置いて卓上塩として利用したい。また焼き上げた魚や肉に振ると、そのうまみとシャキシャキッとした食感がうれしい。ド・ポワソンを使っている。
Comment saler un steak ?
ステーキを焼くとき、肉に塩をするのは焼く前か焼いた後かで意見が分かれることが多い。「焼く前」派は、この方が塩味が肉によくしみいると主張するし、「焼いた後」派は、焼く前に塩をすると、塩が肉のうまみを引き出してしまって味が落ちるとゆずらない。おすすめしたいのは、焼きはじめるごく直前に塩することだ。コショウはというと、焼く前にひきかけると、焼いている間に熱で風味が飛んでしまうので、焼き上げてからにしたい。
Cuisine sans sel pour avoir une fille
ぼくらは最初が男の子だったので、二人めは女の子がほしかった。そこで産み分けノウハウの本を読んだりしたのだが、母親が妊娠する前の3カ月間、無塩の食事をとると女児誕生の可能性が高くなると出ていた(たしか56%の確率が70%以上に)。半信半疑ながら挑戦してみました。味作りに、トマトの酸みやタバスコソースの辛み、ハチミツなどの甘み、各種ハーブやスパイスを総動員して苦労したのだけれど、所詮塩がなくてどうにもならず、味を生み出す塩の力にあらためて納得でした。幸い1カ月ほどで妊娠し、めでたく女児誕生!!