友だちが食べにくる。喜んでもらえるメニューをあれやこれや考えるのは楽しいことだ。こんなとき、フランスの主婦(夫)は、アントレ、メイン、デザートとみごとに三品作りあげてしまう。
三品は手にあまりそう、時間が足りなさそう、というなら、アントレは、魚屋で手に入るゆでエビにマヨネーズを添えればいいだろう。肉屋で生ハムやソーシソンを買ってきて盛り合わせてもいい。ポトフやシュークルートのような料理がメインならアントレは無用になる。
まずは、友だちの好みや今が旬の食材を頭に入れながらメインを選ぶ。食べにくる人が、菜食主義者だったり、フリーグルテンだったり、豚肉を食べなかったりすることもあるので、それも考慮する。最初に肉にするか魚にするか決めたいところだが、肉料理にするつもりで朝市に出かけたら、みごとなタイや活きのいいサバがある。そこで急きょ予定変更というような柔軟性もほしいところだ。
メインの後は、シンプルなサラダやチーズと続くこともあるけれど、メインがボリューム豊かなら、はぶいてもかまわない。そしてみんなに待たれているデザートになる。もちろんパン屋や菓子屋で、でき合いの美しいタルトやケーキを買ってきてもいいのだが、季節の果物を使ったタルトをおぼえておいて焼けば、拍手がわくだろう。
初夏らしいメニューを考えてみた。イカが豊富に出回るころだから、メインはイカのバスク風煮込み。839号のレシピ「Encornet à la basquaise」 では中イカを使っているが、小イカcalamarにすれば調理時間は1時間半ほどでいい。アントレはバスク名物の生ハムにし、デザートは甘みを増しているイチゴのサラダはどうだろう。4人分でイチゴ500グラムを二つか四つに切り分け、レモン半個のしぼり汁、砂糖大さじ1杯、細かく切ったミントの葉少々を混ぜ入れ、30分ほど置いておくだけだ。
こんな豪華なメニューでも、生ハムは大皿に並べるだけだし、メインのイカ料理を前日に作っておけば、当日、みんなが揃ったところで温め直すだけでいいからバタバタしなくてすみます。(真)
Quels vins pour un menu?どんなワインに
張り切ってフルコースを作ると、どんなワインにしようかと少々頭を悩ますことになる。白の酸みや赤の苦みが苦手なら、赤や白で通してもいいのだけれど、人を招いたときは、そうもいかない。ワインを2本開けるとするなら、白から赤、軽いものからコクのあるものへと飲み進むのが基本だ。そこで、メインが肉料理で赤ワインにするのなら、アントレ用のワインは白でも赤でもいいことになり、アントレのレシピの幅が広くなって楽だ。ところがメインを魚料理にして白ワインとなると、アントレも白ワインに合う、野菜や魚介類、卵を使ったレシピを選びたい。
Souper
フランス人だって、毎食アントレ、メイン、デザートというように食べているわけではない。二食ともこんなふうに食べていたら太る一方だ。たとえば、お昼にきちんと食べているなら、夜はアントレ抜きにして、ハムや缶詰のツナなどを入れたミックスサラダとか、あるいはスープにチーズくらいにしておくことが多い。souperという動詞がある。今は映画や芝居などを観た後に夜食をとることだが、古くは晩ごはんそのものを意味していたくらいで、今でもスープは晩ごはんの定番の一つだ。
Plats uniques
ボリュームがあってカロリーたっぷりの料理は、アントレなし、デザートもヨーグルトや果物で十分。こんな料理をplats uniquesという。たとえば、たっぷりの野菜と、牛肉、や豚肉、ソーセージを煮込んだポトフやポテ、アルザス名物シュークルート、インゲンマメがたっぷり入ったカスレ、牛肉のワイン煮ブッフ・ブルギニョン、トマト・ファルシ、アシ・パルマンティエ、ルブロションチーズ入りのタルティフレットなどなど。クスクスやタジン、パエリアなどもアントレは不要。いずれのレシピもオヴニーに掲載ずみなので、検索してみてください。